7.1.8. 社員の多能工化を進めて柔軟な物流体制をつくる丸大県北農林【健全で持続可能な原木・製品輸送の発展に向けて】

東北地方 岩手県 研究 統計・調査

岩手県洋野町の有限会社丸大県北農林は、社員の多能工化と高性能林業機械の導入を積極的に進めて事業を成長させている林業事業体である 。多能工としての技術力を高めた社員が高性能林業機械やトラックを臨機応変に使いこなしており、物流の効率化にもつながっている。

事業者名有限会社丸大県北農林
代表者名大粒来 仁孝・代表取締役
所在地岩手県九戸郡洋野町中野12-15-5
創業年1997年
業種・アンケート種類素材生産業(NO.1)
年間素材生産量47,000 m³
輸送主体自社、委託
輸送手段トラック、セミトレーラー
保有トラック台数トラック3台、フルトレーラー2台、セミトレーラー1台(ヒアリング時)
ドライバー人数3名
ヒアリング対応者大粒来仁孝・代表取締役

7.1.8.1.     造林、伐採、原木運搬など複数業務をこなせる人材を育成

同社の社員数は28名で、内訳は、技術職が23名、事務職が5名となっており、現場重視の人員配置となっている。20歳代から50歳代までの社員がバランスよく在籍しており、平均年齢は34歳と若手主体の組織になっている。

同社の大きな特長は、社員の多能工化を積極的に進めていることである。多能工とは、複数の異なる業務や作業を遂行できる人材のことを意味する。技術職の多くは造林、伐採、原木の運搬作業をこなし、事務職も現場経験が豊富なため、急を要する場合は現場に赴いて作業にあたっている。

多能工化を進めるために社員教育を充実させており、資格取得に必要な費用は同社が全額負担している。また、年に数回、様々な分野の専門家を外部講師として招く研修会などを実施し、社員の知見を高めている。

福利厚生面では、ヘルメットからブーツまで国産登山ブランド「モンベル」の装備を無料支給するなど、働きやすい環境づくりに力を入れている。

7.1.8.2.     自社と委託を併用、社員がサポートし合い臨機応変な輸送を実現

同社は、自社輸送と運送会社への委託を組み合わせて原木を輸送している。近距離の輸送は自社トラックで、長距離や繁忙期は運送事業者に委託して、原木を納品先に円滑に届けられる体制をとっている。

現在、同社はトラック3台、フルトレーラー2台、セミトレーラー1台を自社保有しているが、専任のドライバーは3名しかいない。一見すると、トラックなどが余剰になっているように映るが、同社の場合は、専任ドライバー以外の社員も多能工としてトラックの運転ができるため、自社保有トラックの稼働率を高めることができる。その一方で、専任のドライバーが必要に応じて造林や素材生産事業のサポートなどをすることもあり、社員が臨機応変に働くことで、全体の生産性が高まっている。

図7-1-8-1 アカマツをセミトレーラーで輸送する様子(画像提供:丸大県北農林)
出典:http://marudai-kenpoku.com/information/794/ (2025/03/17閲覧)丸大県北農林『市日に向け盛岡木材センターへ出荷』

同社が拠点を置く洋野町周辺は、北海道のようななだらかな地形が多く、高性能林業機械の利用に適している。同社はこの地の利を活かして、PONSSE社のフォワーダやコンラート社の次世代型ハーベスタ「ハイランダー」、筑水キャニコム社の造林機械「山もっとジョージ」、MDB社の造林機械「LVシリーズ」など、最先端の林業機械を導入している。

多能工として技術力を高めた社員がこれらの高性能林業機械とトラックなどを柔軟に使いこなすことで同社の事業量は伸びており、地域のリーダーとなる林業事業体に成長してきている。同社は今後も、多能工化による人材育成を進めながら林業機械化や物流の効率化に取り組んでいくことにしている。

つづきはこちら

目次はこちら

(株)日本林業調査会

1954年創業。「林政ニュース」の編集・運営・発行をはじめ、森と木と人にかかわる専門書籍の発刊を行っている。

この記事はフリー会員記事(1645文字)です。
フリー会員になると続きをお読みいただけます。
詳しくは下記会員プランについてをご参照ください。