7.1.3. 原木の船舶輸送で地理的ハンディを克服する青森県森林組合連合会【健全で持続可能な原木・製品輸送の発展に向けて】

東北地方 青森県 研究 統計・調査

青森県森林組合連合会は、県内の森林組合や林業事業体が出材する原木を一括して買い取り、製材工場や合板工場等に販売する仕組みを構築している。原木の年間取扱量は約60万m³に達しており、販売先は県内が6割、県外が4割となっている 。物流面では、基本的に森林組合や林業事業体が納品先に原木を直接納めているが、船舶を使った大ロットの輸送については同連合会が担当している。北、東、西の3面を海に囲まれ半島部もある同県の地理的特性を活かして、船舶による原木輸送に先駆的に取り組んでいる。

事業者名青森県森林組合連合会
代表者名須藤廣明・代表理事会長
所在地青森県青森市松原一丁目16番25号
創業年1941年
業種・アンケート種類素材生産業(NO.1)
年間原木取扱量600,000m³
輸送主体委託
輸送手段トラック、船舶
ヒアリング対応者黒瀧晴彦・参事、齊藤誠・木材部長、山崎高之・木材利用課長 下北木材流通センター所長

7.1.3.1.     年間に3~4万m³の原木を船舶で輸送、中心は下北半島の大湊港

同連合会による原木の船舶輸送量は年間4~5万m³程度であり、全取扱量の6~8%を占める。利用している船舶のうち、内航船の積載量は1,300~1,500m³、外航船は約3,000m³前後となっている。

同連合会は、県内5か所の港湾を利用しているが、常時使用可能なのは実質2か所程度である。その中で、下北半島中央部に位置し、陸奥湾に面して「天然の良港」と言われる大湊港からの輸送が中心となっている。

図7-1-3-1 黄色アンダーバーの箇所が青森県森林組合連合会が使用している港湾
出典:https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kendo/kowan/kowan_minatosyoukai.html 
(2025/03/17閲覧)『青森県庁 港の紹介』

7.1.3.2.     「不開港」も利用して輸送コストダウン、西日本の合板工場にも納める

同連合会が船舶輸送を開始した背景には、同県の地理的な特性がある。

県北部の下北半島などから主要な納品先の工場まで原木をトラックで輸送する場合、片道4時間以上かかることがあり、荷積み時間を含めると5時間以上を要する。この長距離輸送というハンディを乗り越えるためには、船舶による原木の大ロット輸送が有効である。

図7-1-3-2 大湊港での原木の積み込みの様子(画像提供:青森県森林組合連合会)

また、同連合会は、約10年前から西日本の合板工場への営業活動を積極的に行い、独自の販路を開拓してきた。この遠距離輸送に対応するためにも、船舶の利用を軌道に乗せる必要があった。

同連合会は、原木の船舶輸送にあたって、「不開港」と呼ばれる港も活用している。「不開港」は、外国船の入出港や貿易は許可されていないが、内航船が入港するための水深は十分に確保されていて船舶の接岸は可能であり、青森県の各地域に設置されているため、集荷に係る陸送部分の輸送コストを大幅に削減することが可能となる。

なお、同連合会は、船舶を使った原木輸送を主に春から秋にかけて行っている。日本海の冬期の海況は厳しく、安全な運行が困難になるため、直近2年間は冬季の輸送は行っていない。

7.1.3.3.     輸出も含めて船舶を確保し、国内外の原木ニーズに応える

「物流の2024年問題」の影響で、下北半島など遠隔地からの原木輸送はさらに困難になっている。従来はトラックで輸送可能だった距離でも、トラックドライバーの労働時間規制により実質的に不可能となるケースが出てきており、委託料も上昇傾向にある。 こうした状況を受けて、同連合会は、原木の船舶輸送をさらに拡大していくことを計画している。そのためには必要な船舶を確実に確保していくことが重要であり、内航船だけでなく、輸出を含めて外航船も積極的に活用していく方針である。特に、同連合会が取り扱っている合板用原木の品質は、海外のユーザーが求める水準を十分にクリアしており、森林所有者など原木の出荷側にとっては、売り先が国内外に存在する状態になってきている。このようなニーズを的確に捉えて、船舶を利用した原木の安定供給体制を構築すれば、山元への利益還元が増えて、森林の循環的利用が進むことになる。同連合会には、その中核となることが期待されている。

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(株)日本林業調査会

1954年創業。「林政ニュース」の編集・運営・発行をはじめ、森と木と人にかかわる専門書籍の発刊を行っている。

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