7.1.7. 5つの中間土場を活用し自社トラック等で輸送効率を高める佐川運送【健全で持続可能な原木・製品輸送の発展に向けて】

関東地方 茨城県 研究 統計・調査

有限会社佐川運送は、全国に先駆けて高性能林業機械を積極的に導入し、2006年には林野庁主催の国有林間伐推進コンクールで最優秀賞を受賞するなど、先進的な林業事業体として知られている 。年間の素材生産量は約5万5,000 m³に上り、そのほとんどを自社のトラックとフルトレーラーで輸送している。その拠点として5つ中間土場をフレキシブルに活用しており、「物流の2024年問題」への対応を含めた輸送効率の向上につながっている。

事業者名有限会社佐川運送
代表者名佐川賢司・代表取締役
所在地茨城県高萩市大字大能366-2
創業年1950年
業種・アンケート種類素材生産業(NO.1)
年間素材生産量55,000m³
輸送主体自社
輸送手段トラック
保有トラック台数単車4台、グラップル付き単車6台、グラップル付きフルトレーラー1台
ドライバー人数専任5名
ヒアリング対応者佐川賢司・代表取締役

7.1.7.1.     トラックとフルトレーラーを使ってシンプルな物流体制を構築

同社が取り扱っている原木の主な納品先は、茨城県常陸太田市・常陸大宮市の宮の郷工業団地、福島県塙町の大型木材加工工場及び栃木県那須塩原市の大型製材工場の3か所である。その中でも、原木市場や製材工場、木質バイオマス発電所などが集積している宮の郷工業団地が納品量全体の約8割を占める。これらの納品先は30〜100km圏内にあり、同社が設置している中間土場からは片道約1〜2時間の距離にある。

図7-1-7-1 原木を輸送するフルトレーラー(画像提供:有限会社佐川運送)

同社の社員数は29名で、このうち4名が10t車、1名がフルトレーラーのドライバーであり、ほかに20名が素材生産(5班体制)、1名が車両整備などメカニック、3名が事務作業に従事している。

ドライバーは、素材生産の作業班よりも1時間早く出勤し、前日に伐出した丸太を積み込んで輸送し、1時間早く退勤する勤務体系になっており、残業はほとんど発生していない。トラックにはデジタルタコグラフ(デジタコ)を搭載して最適な走行ルートを選択できるようにしており、ドライバー同士が連絡を取り合うことで待ち時間を減らすようにしている。また、フルトレーラーは主に中間土場から納品先までの輸送を担っている。

このようなシンプルな物流体制を構築しているので、複雑な配送計画などは必要なく、輸送全体が効率化されている。

7.1.7.2.     機械とオペレーターを固定化し、日々のメンテナンスを徹底

同社は、高性能林業機械を基本的に自己資金で購入しており、リースなどは利用していない。

購入した機械のオペレーター(操作者)は固定化し、オイル交換等の日々のメンテナンスもオペレーター自身が行うことで故障の早期発見などにつなげている。

図7-1-7-2 事務所裏にあるメンテンス場
出典:高萩市で調査チームが撮影(2025年2月)

日々のメンテナンスで手に負えない故障や不調には専属のメカニックが対応している。同様の取り組みをトラックやフルトレーラーでも行っており、稼働率の向上が図られている。

7.1.7..3.     中間土場によって大量輸送にシフト、専門の担当者がサポート

同社は、輸送量の増加に伴って、中間土場を積極的に利用するようになった。現在、同社が利用している中間土場は茨城県内を中心に5か所にあり、このうち3か所は自社所有である。

その中で最も大きいものが常磐自動車道の高萩IC(インターチェンジ)の近くにある中間土場であり、約600m³の丸太をストックできる。伐出現場からトラックで運ばれてくる原木を中間土場で一時的に仕分けし、フルトレーラーに積み込んで輸送する重要な拠点になっている。

図7-1-7-3 高萩IC付近にある中間土場
出典:高萩市で調査チームが撮影(2025年2月)

同社では、専門の担当者が各中間土場を巡回して、原木の検知や仕分け、積み込みなどの作業が円滑に進むようサポートしている。中間土場に積まれた原木には、チョークで変則的なラインが引かれているが、これはフルトレーラー1台分の積載量の目安を示しており、積み込み作業をスムーズに行う手助けになっている。

図7-1-7-4 中間土場の原木に引かれたチョーク線
出典:高萩市で調査チームが撮影(2025年2月)

近年は、警察による過積載の取り締まりが強化されており、フルトレーラーなどを使って原木をまとめて輸送することが益々重要になってきている。同社は、引き続き中間土場を拠点にしてフルトレーラーの利用頻度を増やし、物流の効率化を進めることにしている。

つづきはこちら

目次はこちら

(株)日本林業調査会

1954年創業。「林政ニュース」の編集・運営・発行をはじめ、森と木と人にかかわる専門書籍の発刊を行っている。

この記事はフリー会員記事(2024文字)です。
フリー会員になると続きをお読みいただけます。
詳しくは下記会員プランについてをご参照ください。