7.1.6. 独自の配車システムで物流を円滑化する木脇産業グループ【健全で持続可能な原木・製品輸送の発展に向けて】

九州地方 宮崎県 研究 統計・調査

木脇産業グループは、国産材製材の一大拠点である宮崎県都城市に本社を置く木脇産業株式会社と関連企業で構成しており、植林、素材生産から製材、プレカット事業まで垂直統合型の事業を展開している 。年間の原木取扱量は約25万m³に達し、グループ内では木脇林業株式会社が素材生産及び原木の調達・販売、万ヶ塚運送株式会社及び株式会社マルキ運輸が原木の輸送を担当している 。物流の拠点としている土場の面積は1.7haと原木の取扱量に対して狭小であるが、独自の配車システムを構築して円滑な物流を実現している。

事業者名木脇産業グループ(木脇林業株式会社・万ヶ塚運送株式会社・株式会社マルキ運輸)
代表者名木脇桂太郎・代表取締役
所在地宮崎県都城市丸谷町458番地
創業年1948年
業種・アンケート種類素材生産業(No.1)、運送事業者(No.4)
年間原木取扱量250,000 m³
輸送主体自社
輸送手段トラック
保有トラック台数70台(単車・フルトレーラー)
ドライバー人数43名
ヒアリング対応者山下史洋・木脇林業株式会社代表取締役・万ヶ塚運送株式会社専務取締役

7.1.6.1.     創業から75年以上の歴史を持つ都城市の基幹木材企業

木脇産業グループの中核である木脇産業は、1948年に製材業者として創業した。創業当初から大手ゼネコンの木材納入事業者として高品質な木材製品の供給を続けてきた[i]。大企業の厳格な品質要求に応える中で製品生産の技術水準を着実に向上させてきた社歴を持つ[ii]

1990年には、住宅建材の高付加価値化の流れを先取りし、プレカット都城協同組合を設立してプレカット事業に本格参入した。2008年には、グループ全体の年間原木消費量が12万m³に達し、林業・木材産業の基幹企業としての地位を確立した。

近年は、木質バイオマス発電用チップや原木輸出の需要拡大といった市場環境の変化に対応して事業領域をさらに拡大しており、直近の年間原木取扱量は約25万m³にまで増加している[iii][iv]

この約25万m³の内訳は、自社工場での使用が約13万m³、バイオマス発電用チップが約6万m³、外部販売が約6万m³となっている。自社用の原木だけでなく他社向けの原木も取り扱っており、原木市売市場に近い機能も果たしている。これを可能にしているのが安定した原木調達力と効率的な物流体制である。

7.1.6.2.     毎日50台以上のトラックが円滑に運行するオペレーションを構築

木脇産業グループは、年間約25万m³という膨大な原木を取り扱うために、原木を積んだトラックが毎日50台以上円滑に運行するオペレーションを運営する仕組みを構築している。

輸送の中軸を担っているのはグループ企業の万ヶ塚運送であり、全体の約8割の輸送を手がけている。

図7-1-6-1 搬入された原木を仕訳ける自動選別機
出典:都城市にて調査チームが撮影(2025年1月)

搬入された全ての原木は、入荷当日に原木選別機によって製材用、チップ用、販売用などに正確に分類される。特に販売用の原木については、限られた土場面積を有効活用するため、翌日朝までに確実に出荷する体制が整えられている。この「滞留させない」運営方針が、狭小な土場で大量の原木を取り扱うことを可能にしている。

このような大規模かつ複雑な輸送体制を支えているのが、長年の経験と試行錯誤を通じて構築された独自の配車システムである。その特徴は、以下の点にある。

  • 前日確定型スケジューリング: 前日夕方の時点で翌日の配車計画を確定させている。これにより、当日朝にはドライバーや作業員が明確な行動予定を把握して業務に臨むことができ、迅速かつ効率的な運行が実現している。
  • リアルタイムコミュニケーション:ドライバーや作業員間の連絡には携帯電話を利用し、現場状況に応じた迅速な情報共有や意思決定が可能となっている。このきめ細かなコミュニケーション体制が、日々変動する現場状況への柔軟な対応を支えている。

以上のように木脇産業グループは、年間に約25万m³の原木の効率的に輸送する体制を整えており、「物流の2024年問題」にも速やかに対応している。


[i] 『林政ニュース』編集部(2009/1/14)『隔週刊『林政ニュース』第356号』日本林業調査会

[ii] 『林政ニュース』編集部 (2009/1/28)『隔週刊『林政ニュース』第357号』日本林業調査会

[iii] 『林政ニュース』編集部(2012/5/30)『隔週刊『林政ニュース』第437号』日本林業調査会

[iv] 『林政ニュース』編集部 (2012/6/13)『隔週刊『林政ニュース』第438号』日本林業調査会

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(株)日本林業調査会

1954年創業。「林政ニュース」の編集・運営・発行をはじめ、森と木と人にかかわる専門書籍の発刊を行っている。

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