分譲マンションなどを手がける準大手ゼネコンの(株)長谷工コーポレーション(東京都港区、熊野聡社長)は、奈良県五條市で国産材加工工場の建設に着手した(8月5日に発表)。国産のスギを原料にして木質建材「HSウッド(長谷工サステナブルウッド)」を生産する。新工場は2027年2月に竣工し、製造設備のライン整備などを経て2028年4月から本格稼働する予定。年間最大生産量(製品ベース)は1万5,000m3を見込んでいる。
「HSウッド」を年間1万5,000m3生産、2028年4月稼働
「HSウッド」は、スギ丸太から切削した木片(ストランド)の長さ方向を一方向に揃えて積層した木質建材(エンジニアウッド)。同社と秋田県立大学木材高度加工研究所、北九州市立大学が共同開発したもので、製品構成に関する特許を出願している。既製品OSB(配向性ストランドボード)は、ストランドをランダムまたは交互に並べてつくるが、「HSウッド」はストランドを同じ方向に揃えることで軸方向の強度と安定性を高める。製材や合板用単板への利用が難しい小径木や曲がり材などもストランド化によって有効利用できるメリットもある。

「HSウッド」は、これまで外国産のLVLを使っていた内装の壁や天井の下地となる木材軸材に用いることにしており、主に関西・東海地方で施工するマンションで採用する予定。一方、関東圏では、下地軸材として主に軽量鉄骨(角型スタッド)を使う方針をとっている。

同社が工場などを新設する用地の面積は4万1,670.62m2。ここに、R(鉄骨)造1階建ての工場棟と、木造2階建ての管理棟を建てる。設計は(株)キタムラ(奈良県五條市)と(株)Style-A(大阪府大阪市)が担当し、施工はキタムラが行う。
ウッドフレンズを傘下に収め、東京都内で木造マンションを建設
長谷工グループは、奈良県五條市における工場新設のほかにも“木”に関わる事業を強化している。
4月10日には、東海地方で国産材を使った戸建住宅の建設・販売や森林整備、不動産事業などを行っている(株)ウッドフレンズ(愛知県名古屋市)に対してTOB(株式公開買い付け)の実施を発表し、6月3日に筆頭株主となって傘下に収めた。
また、5月20日には、木造とRC(鉄筋コンクリート)造のハイブリッド構造による賃貸マンション「ブランシエスタ目黒中央町」が3月に竣工したことを発表した。

同マンションは、1階から3階がRC造、4階から7階が木造・RC造となっており、既存の同規模建築物と比べて二酸化炭素(CO2)排出量を約570t削減できたと試算している。4階から7階のハイブリッド構造では、木造部分をRC造で囲うように配置し、木造住戸のすべての壁は非耐力壁にして、間取りの自由度や更新性を高めている。
同社は2014年からマンションの木造・木質化に取り組んでおり、これから建設するマンションでも積極的に木材を利用していく方針を明らかにしている。
このほかにも同社は、4月24日に竣工したパワーエイド三重合同会社(松阪市)が運営する完全NON-FIT型の「パワーエイド三重シン・バイオマス®松阪発電所」に出資するなど、“木”への接近度を強めている。
(2025年8月18日取材)
(トップ画像=工場棟・管理棟の完成イメージ、画像提供:長谷工コーポレーション))
『林政ニュース』編集部
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