目次
守屋木材グループで「木や建築に関わることなら何でもやる」
遠藤理事長は、守屋氏が仙台木材市場の社長に就任した翌年(2016年)の夏に仙台市を訪れ、意見を交わしている。このときも「市場」や「市売」が曲がり角に立っていることが話題になり、従来からのビジネスを続けているだけでは先細りになるとの認識で一致していた。
守屋・全市連会長が木材流通のキープレーヤーである「市場」をどのように改革していこうとしているのか、全国の関係者が期待感を持って見詰めていることだろう。木材需給のひっ迫で「市場」の存在感がかつてなく高まっていることを踏まえ、全市連会長としての率直な考えなどを聞いていきたいが、本題に入る前に、守屋木材の最近の事業内容を教えて欲しい。6年前に伺ったときは、製紙用チップや家具製造のほか、社寺用材や木質ペレット、おが粉、薪、土木資材などを取り扱っており、素材生産やリサイクル事業も手がけていた。実に幅広い事業を展開していることに驚かされたが、今も同じような業容なのか。

木や建築に関わることなら何でもやるというのが守屋木材の基本姿勢だ。関連会社の(株)奥羽木工所(仙台市)や守屋運輸(株)(同)、仙台日立生コン(株)(同)なども含めてグループ全体で顧客からの様々な注文に応えられるようにしている。
注文にきめ細かく対応することで事業が広がり、多角化してきたということか。新しい木質材料なども扱っているのか。
時代の変化に伴っていろいろな材料が出てくるので、それも取り扱うようにしている。CLTを使った非住宅建築物などの施工も引き受けている。
非住宅建築物向けの大量注文には業界の“結束力”で対応
非住宅建築物の分野は、新しい需要を生み出してきている。さらに事業を広げていく上で、留意すべき点はあるか。
物件の規模が大きく、取引先も大手のゼネコン(総合建設業者)やデベロッパー(開発業者)になるので、私どものような木材企業が1社だけでやるのではなく、連携体制をつくって取り組むことが基本になる。
また、ゼネコンやデベロッパーにとって、木材はあくまでもマテリアルの1つであるという共通認識を持つことが重要だ。品質や性能、価格、供給力などで、他の建設資材と比較しても木材が選ばれるようにしていかなければいけない。
その観点は非常に重要だ。国産材業界は、どうしても「うちの木を使ってくれ」となりがちだが、客観的な評価に基づいて選ばれる材料にしていく努力が必要だろう。
とくに国産材製品の場合は、量を確保して安定的に供給していくことが一番の課題だ。想定外のアクシデントにも対応できるような備えも必要になる。
そのようなアクシデントにあったことがあるのか。
守屋木材が中心となって、2,500m3以上の地域材製品を使う大型物件を仙台市から受注したことがある。施工は順調に進んだが、建物の骨組みがほとんどでき上がったときに火災事故が起きてしまった。仙台市からはもう一度、地域材製品を使ってやりたいという希望があり、地元の製材所などと協力して納めることができた。
つまり、2,500m3を2回、計5,000m3の地域材製品を供給したわけか。
私どもの業界が結束すれば、このくらいの供給力はあるし、この物件をこなしたことで自信を持つこともできた。そのベースには、「市場」の運営を通じて培ってきたネットワーク力がある。
非常時であっても品不足は起こさず、継続的な取引を支える
守屋会長が社長を兼務する仙台木材市場は、東北初の市売市場として1955年に発足した。設立時には、材木屋など450社が出資し、現在も株主は200社以上に達する。地元の業界を挙げて支え、育ててきた「市場」といえる。
「市場」の持つネットワーク力は、今のような混沌とした状況を乗り切っていく上でも、重要性を持つだろう。「市場」は、単に木材製品を取引するだけでなく、情報を収集し分析する場として、他にはない機能を持っている。
ウッドショックと形容された昨年(2021年)の価格高騰と品不足のときには、「ここにある柱を全部くれ」と驚くような注文が来たこともあった。
しかし、私どもは従来からの継続的な取引を基本にしているので、価格の上昇はあったものの、製品の不足は一切起こさないようにしてきた。これは、私が社長になる前から一貫していることだ。
欠品を出さないことが伝統的に守られているのか。
2011年に東日本大震災に襲われたときには、復興用を含めて木材が不足するのではと心配された。しかし、九州の熊本県などから各種の木材製品がこの市場に届き、杞憂に終わった。熊本県は、被災地支援として輸送費の補助対策も講じてくれた。こうした関係性は、一朝一夕にできるものではなく、今でも熊本県の製材所などとは安定的な取引を続けている。
記念市でユーザーのニーズを掴む、合板の売り方にも工夫
遠藤理事長が守屋会長とオンライン「対論」を行ったのは7月7日。七夕のこの日と翌日(7月8日)、仙台木材市場では記念市と呼ばれる展示即売会が開催された。記念市は年に4回行っており、いつも以上の出品数と来場者がある。
記念市と通常の市日との最大の違いは何か。
記念市では、材木屋がそれぞれの顧客、つまり大工や工務店を連れてくる。こうしたユーザーが何を欲しているかを直接聞けることは非常に重要で、私どもにとっても貴重な情報収集の機会になっている。今秋に向けた仕入れや販売方針を立てる際にも大いに参考になる。
販売方法などで工夫していることはあるか。
今は合板の不足感が強いので、できるだけ多くの方々に買っていただけるように、1バンドルを50枚や100枚にして、小口の注文にも応じられるようにしている。実際、合板を求めて早くから来場している方が多い。

ところで最近、気になっていることがある。外材製品の輸入拠点である東京の15号地木材埠頭などでは、在庫がだぶつき始めたという情報が入ってきている。
その点は注意深く見ている。率直に言って需要が減ってきている側面がある。(後編につづく)
(2022年7月7・8日取材)
(トップ画像=仙台木材市場では7月7・8日に記念市を開催した)
遠藤日雄(えんどう・くさお)
NPO法人活木活木(いきいき)森ネットワーク理事長 1949(昭和24)年7月4日、北海道函館市生まれ。 九州大学大学院農学研究科博士課程修了。農学博士(九州大学)。専門は森林政策学。 農林水産省森林総合研究所東北支所・経営研究室長、同森林総合研究所(筑波研究学園都市)経営組織研究室長、(独)森林総合研究所・林業経営/政策研究領域チーム長、鹿児島大学教授を経て現在に至る。 2006年3月から隔週刊『林政ニュース』(日本林業調査会(J-FIC)発行)で「遠藤日雄のルポ&対論」を一度も休まず連載中。 『「第3次ウッドショック」は何をもたらしたのか』(全国林業改良普及協会発行)、『木づかい新時代』(日本林業調査会(J-FIC)発行)など著書多数。