持続性担保の“輪”拡大へ、キックオフ・フォーラムを開く

国産材を活用し日本の森林を守る運動推進協議会(東京都文京区、前田直登会長)は、5月30日に東京都江東区の木材会館でキックオフ・ フォーラム「みんなでつくる持続可能な森林(もり)と社会」を開催し、約200人が参加した。

中央5団体が「共同宣言2025」を採択し、賛同呼びかけ

キックオフ・ フォーラムでは、基調講演や討論などを行った後、林業・木材産業関係の中央5団体が「持続性の担保された木材しか使わない社会」の実現を目指す「共同宣言2025」を採択し、広く賛同を呼びかけた。

国産材Sマーク、「S」はサステナブル(Sustainable)を意味する

同協議会は、「共同宣言」に基づく活動のシンボルとして「国産材Sマーク」を制定し、個人・企業・団体などに協力と利用拡大を働きかけることにしている。マークの使用料は5年間で1万円とし、協力者の名称を同協議会のホームページに掲載するなどして、新たな国民運動につなげていく方針だ。

「立木市場」や「国産材Sマーク」の本格普及へ国民運動目指す

2017年に発足した同協議会は、「共に行動する企業」*1の認定や「国産材の家認定制度」の運営、中央7団体による「共同行動宣言2022」*2のプロデュースなどを通じて、持続可能な林業経営と木材利用を支える体制整備に取り組んできた。今年度(2025年度)からインターネット上でスタートした「立木市場(立木取引システム)」*3にも主体的に関与しており、2月には2013年に日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)が創設した「国産材マーク」*4の運用を引き継いでいる。

こうした実績を踏まえて開催したキックオフ・ フォーラムは、同協議会の活動が新たな段階に入ったことを意味する。冒頭に挨拶した前田会長は、「森林の持続性の確保が木材利用の前提となる中で、日本の再造林率は3~4割とみられており、現状は国際的にも国内的にも許されない」との認識を示した上で、「『国産材Sマーク』などを通じて持続性の担保された木材の差別化と流通拡大を進めたい。日本の森林が新しいステージを迎え、新しい動きが始まろうとしていることを感じとっていただきたい」と強調した。

東京海上グループの新本店は世界でも例のない木造高層ビルに

キックオフ・ フォーラムの基調講演では、小坂善太郎・林野庁次長、隅修三・ウッド・チェンジ協議会会長、立花敏・京都大学教授の3氏が登壇して、森林・木材を持続的に利用するための課題と対応策などについて解説した。

この中で、東京海上日動火災保険(株)の相談役でもある隅氏は、2028年に竣工予定の東京海上グループ新・本店ビル(20階建て、東京都千代田区)について、「7,000~7,500m3の木材使用量になり、世界的にみても前例のない木造高層ビルになる。来年(2026年)の春から夏頃には木材の構造部分が見えるようになる」と報告した。

東京海上グループ新・本店ビルの完成イメージ

また、立花氏は、フィンランドにおける立木価格やオーストリアの丸太価格、ニュージーランドや米国南部の育林・植栽費用などを紹介した上で、「日本の丸太価格は欧米の水準に近いものの育林費用などが欧米よりも高く、林業適地で低コスト施業体系を確立することが重要」と指摘した。

キックオフ・ フォーラムには一般市民を含めて約200人が参集した

基調講演を受けて、吉川重幹・日本林業経営者協会会長と堀尾牧子・SGEC/PEFCジャパンマーケティング&プロモーション部長が加わって討論を行い、「立木市場」などを活用して持続性が担保された合法木材の利用を推進していく方向性を確認した。

(2025年5月30日取材)

(トップ画像=「共同宣言2025」への賛同を呼びかける中央5団体の代表)

『林政ニュース』編集部

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