2月7日と27日に東京都内で、森林サービス産業の可能性を考える会合が相次いで開催された。その要点をお伝えする。
「山村と企業をつなぐフォーラム」に約300名参加、交流を深める
2月7日には江東区の木材会館で「山村と企業をつなぐフォーラム」(林野庁主催)が開かれ、オンラインを含めて約300名が参加した。
冒頭、農林水産副大臣の滝波宏文氏が登壇し、「石破茂総理大臣のもと『地方創生2・0』を推進している。農林水産地域と企業がつながり、気づきが得られる機会になって欲しい」と期待を述べた。

続いて、NPO法人Nature Service共同代表理事の赤堀哲也氏が基調講演し、企業が抱える離職率の高さやメンタル不調者の増加などの課題を解決するカギは「ウェルビーイング(Well-being)」にあると指摘、森林と親しむことを通じて、リラックス効果とイノベーションへの意欲が同時に得られることをデータを交えて解説し、「まずは近隣の森林でトライしていこう」と呼びかけた。
その後、TDKラムダ(株)、大成建設(株)が取り組み事例を発表し、(株)JTB総合研究所が森林を活用する企業にもたらされるメリットについての調査結果を報告した。また、森林サービス産業推進地域に指定されている11地域の代表がプレゼンテーションを行った。参加者の間からは、「具体的な取り組み事例が参考になった」、「このような交流の場があると自分達に不足している点が明確になる」などの感想が聞かれた。
木材生産に固執せず「新たな森林経営」へ、率直に意見を交換
2月27日には港区の汐留ビジネスフォーラムで、「森林の多面的利用で生み出す新たな森林経営」をテーマにしたシンポジウム(大日本山林会などが主催)が行われ、約80名が参加した。
主催者を代表して、大日本山林会会長で林業経済研究所理事長の永田信氏が挨拶し、「今まで外部経済と言われていた森林の複合的・総合的な利用が新たな森林経営のあり方になっていく」との見方を示した。
続いて、フォレストアドベンチャー・小田原などを運営している(株)T-Forestryの辻村百樹氏、製材・工務店とキャンプ場を営む三栄林産(株)の坂成哉氏、たたら製鉄の流れを汲む森林利用を行っているたなべたたらの里の井上裕司氏が現状などを報告。「forenta」を展開するシシガミカンパニーの田口房国氏と、キャンプ場や企業研修施設などを運営する(有)きたもっくの土屋慶一郎氏がそれぞれの立場からアドバイスなどを行った。
パネルディスカッションでは、森林総合研究所関西支所の八巻一成氏がファシリテーターをつとめ、森林サービス産業を新たな収益源とする手法や考え方などを中心に意見を交わした。

田口氏は、「都会の土地は多様な使い方をしているのに、なぜ森林は木材生産だけを考えるのか。森林経営はもっと自由であるはずだ」と問題提起し、「人と自然との関係性を見直す時代になっている」などの指摘も出た。
締め括りに八巻氏は、「50年、100年といった長期的視点で森林と向き合い、次世代に胸をはって引き継げる財産を目指していくという共通認識のもとで、新たな収益源を模索していくことが重要」と議論を総括した。
(2025年2月7日・27日取材)
(トップ画像=基調講演は赤堀哲也氏が行った)

『林政ニュース』編集部
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