木材利用促進月間(毎年10月)の目玉イベントである「木づかいシンポジウム2022」(主催=(株)Spero、(株)GiveFirst、全国木材組合連合会)が10月7日に東京・日本橋の室町三井ホール&カンファレンスで開催された。中高層ビルの木造・木質化に取り組んでいる大手企業(施主)をはじめディベロッパー、ゼネコン、商社のほか、建築・設計、木材加工などに関わるトップリーダーらが集結し、「4番バッターが揃ったような豪華なメンバー」(関係者)という声も出る中で、国産材利用の課題と可能性について多角的に意見を交わした。参加するには1万円(前売り5,000円)のチケット購入が必要な有料シンポジウムとして行われ、約300人が会場に足を運んだ。
開会式で野中厚・農林水産副大臣が挨拶したほか、森林を活かす都市の木造化推進議員連盟幹事長の金子恭之氏、CLTで地方創生を実現する議員連盟会長の石破茂氏、元農林水産大臣政務官の下野六太氏など、国会議員も相次いで登壇し、国政レベルでも都市の木造・木質化が重要課題になっていることを強調した。
また、ウッド・チェンジ協議会の隅修三会長が基調講演を行ったほか、林業振興から木材利用、まちづくり、投資、新規ビジネスモデルまで幅広くカバーする7つのテーマを設定し、ウッドデザイン協会の隈研吾会長をはじめとする25名のパネリストがパネルディスカッションを通じて議論を深めた。
主催したSpero(東京都目黒区)の高橋ひかり社長は、「シンポジウム終了後、大手企業やスタートアップなどを中心として『この企業とタッグを組んでいきたい。ぜひ紹介してほしい』という問い合わせが多く来ており、協業の芽が生まれつつある」と手応えを話している。
高橋・Spero社長「大手や異分野とのマッチング目指す」
「木づかいシンポジウム2022」の企画・運営を担ったSperoは、社会課題を解決し、新たな価値創出につながるビジネスをサポートする「ソーシャルインキュベーター」として2018年に創業した。様々な業種・領域に及ぶ事業の支援などを手がけており、林業分野では「Sustainable Forest Action」(略称「SFA」)の事務局をつとめている。

同社の高橋社長は、慶應義塾大学を卒業して(株)リクルートに入り、人材領域の営業職を通じて社会人としての基礎を学んだ後、ハードウェアスタートアップと中小企業や工場等をマッチングする事業を立ち上げ、責任者として約4年半汗を流した。リクルートを退社してからはスタートアップの投資・支援を行うベンチャーキャピタルでの在籍を経て、Speroを立ち上げた。
高橋社長は、これまでの経験を踏まえて、「大きなスケール(規模)だからこそ解決できる課題がある」と話しており、「林業サイドが大手企業や異分野などと連携する機会をつくることが重要」と指摘する。とくに重視しているのは、活発化しているESG投資など新たな資金の流れを林業・木材産業に呼び込むことだ。投資の対象として選ばれるためには、どのような収益が期待できるのかを具体的に示す必要がある。このため、現在実施中のSFAでは、審査基準に「市場性」と「成長性」を加えて、林業・木材産業が持つポテンシャルや将来性を「見える化」することに努めている。「これまで関わりのなかった企業がアプローチしてきている。大きなチャンスであり、林業が持つ文化も含めて何とか業界全体の底上げにつなげたい」と前を見据えている。
(2022年10月7日取材)
(トップ画像=10月2日付けで中国木材(株)の社長に就任した堀川保彦氏(右端)も登壇し、「日向工場モデル」について説明した)

『林政ニュース』編集部
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