全国14産地の逸品が一堂に!「第58回全国漆器展」開催

全国14産地の逸品が一堂に!「第58回全国漆器展」開催

全国各地の漆器が一堂に集まる展示即売会「第58回全国漆器展」が東京都港区の「伝統工芸青山スクエア」で9月15日から28日まで開かれた。今回から特別テーマ部門が新設され、海外からの関心も高まるなど、漆器を巡る状況は新たな段階に入っている。

木曽漆器と香川漆器に大臣賞、“産地力”の桂宮賞に越前漆器

「全国漆器展」は、日本漆器協同組合連合会(中央区)、日本漆工協会(同)、伝統的工芸品産業振興協会(港区)が主催し、1967年から毎年実施している。今回は14産地が自慢の逸品を出品して漆器の可能性を示し、優秀作品の選定・表彰も行った。

伝統的な技法を競う美術工芸品部門では、木曽漆器工業協同組合(長野県塩尻市)の「漆皮 朱塗縁金線楢紋様皿 朱塗縁金線梅型小皿5枚組」が農林水産大臣賞(最優秀賞)に輝いた。皮に漆を塗る「漆皮」という技法でつくられた皿で、「皮の柔らかな曲線を花に見立てた造形と細かな細工のセンス」(審査講評)が高く評価された。

市場性を重視する産業工芸品部門では、一和堂工芸(株)(香川県高松市)の「香川漆器 漆下駄 『Siccok』」が経済産業大臣賞(同)に選ばれた。香川県独自の手法である象谷塗(ぞうこくぬり)を同じく同県の伝統工芸品である下駄に施したもので、「漆器と下駄という日本文化の合わせ技で、海外市場への勝負に出られる可能性がある」(同)と見込まれた。

産地の“総合力”を審査する団体部門では、越前漆器協同組合(福井県鯖江市)が桂宮賞(同)を受賞した。同協同組合は、「事前審査を行って実力のある商品を出品し、3年連続で桂宮賞を獲得している」実績に加えて、「各産地の中でとくに市場動向に寄り添っている」(同)ことが評価ポイントとなった。

3点に初の「めしまり」賞、海外で「JAPANNEDWARE」普及

「全国漆器展」は、今回から特別テーマ部門を新設した。設定テーマは毎年変わる予定で、第1回は「めしまり」。日本漆器協同組合連合会は、一昨年(2021年)から11月10日を「漆塗りのお椀でご飯をいただく記念日」(通称:めしまりの日)に制定し、和食文化と漆器の魅力を発信している。栄えある初の「めしまり」賞(同連合会理事長賞)には、(有)伊藤寛司商店(塩尻市)の「和塗木地呂飯椀・箸・箸置き・汁椀」、梶原漆器店(石川県輪島市)の「夫婦椀 魯山人型」、中門漆器店(輪島市)の「福寿椀 パールロゼ」の3点が選ばれた。

「めしまり」賞を受賞した3点

「全国漆器展」の会期中、会場には途切れることなく来客があった。同連合会の春原政則事務局長は、最近のニーズについて、「インバウンド(訪日外国人観光客)の需要が高まっている」と指摘し、販路拡大に向けて外国市場にも積極的に打って出たい」と話す。

海外で日本の漆器は「lacquerware(ラッカーウェア)」としか表記されておらず、外国産の漆器と一括りになっている。そこで同連合会では、高品質な日本の漆器をPRするブランド「JAPANNEDWARE(ジャパンドウェア)」の普及を進めている。春原事務局長は、「日本の漆器の良さが伝わるブランドとして育てていきたい」との方向性を示している。

(2023年9月15日取材)

(トップ画像=農林水産大臣賞(右)と経済産業大臣賞の受賞作品)

『林政ニュース』編集部

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