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青森県 森林経営・管理 予算・事業

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その麓の徳島県つるぎ町に拠点を置くつるぎ木材加工協同組合(伊庭雅俊・代表理事)が、苗木づくりからチップ材加工まで手がける一貫生産体制を築き、「エコサイクル」の確立を目指している。独自の発想で事業領域を広げている同組合の最新状況をレポートする。 簡易製材機で大径材をフリッチに加工、「餅は餅屋」で活かす つるぎ木材加工協同組合が所有する原木土場に足を踏み入れると、大径材を加工したフリッチが積み上げられていた。その奥からは米国・ウッドマイザー社製の簡易製材機「LT15WIDE」の稼働音が聞こえる。直径90cm、長さ8m以上の原木まで挽ける同機を、同組合は2020年に購入した。

伊庭理事が選んだ木材加工の新アプローチ

簡易製材機「LT15WIDE」

代表理事の伊庭雅俊氏(42歳)に導入した理由を聞くと、「伐出材の大径化が進んでいるが、地元で加工できるところが減っている。自分達で大径材を活かすためには、小回りの効く簡易製材機を使うのが最適だ」との答えが返ってきた。
簡易製材機は、自ら伐採・搬出し、製材加工も行い、家まで建てる──といった小規模で6次産業化を志向する事業者が利用するケースが多い。だが、同組合の使い方は、一味違う。原木を土場でフリッチにして木材業者に販売するスタイルを基本にしている。フリッチは原盤とも言われ、原木の樹皮などを落として1次加工しただけの半製品だ。

なぜ、加工レベルを上げて最終製品にしないのかと伊庭代表理事に問うと、「餅は餅屋だから」と言い、「木材業者と連携して最終製品にした方が付加価値が高まる。原木の2〜4倍の価格になることも珍しくない」と続けた。
フリッチの得意先の1つが輸入材を原料に梱包材を製造している近隣の業者。元々、フリッチを加工する設備やノウハウを持っているので、国産フリッチにもスムーズに対応できる。伊庭代表理事のもとには、「中身がわからない原木よりも、わかっているフリッチの方が買いやすい」との声が届いているという。

土建業者が林業分野に進出し、素材生産、造林・保育、苗木も
 伊庭代表理事は、フリッチに加工するメリットとして、「トラックにより多く積載できるようになる」こともあげた。

土場に積まれた大径材のフリッチ

効率的な木材加工と経営革新

 つるぎ木材加工協同組合は、購入した原木を製材・合板用とチップ用に大別している。梱包材用に加えて製材・合板用の一部もフリッチにすることで、取引単価の向上とともに、「流通コストの大幅圧縮が見込める」(伊庭代表理事)という。
加工工程で出てくる端材や、品質が一定レベルに達しないフリッチは、チップ用原木とともに移動式チッパーにかけてチップ材にする。「将来的には山土場で仕分け・加工し、運送のムダをなくしていきたい」(同)と構想している。
 同組合は、土木建設業者の4社がMDF用の木質チップを製造するために、2009年に設立した。この頃、県内の土建業界は右肩下がりで景況が落ち込んでおり、新たな収益源を求めて林業・木材産業の分野に進出した。社運を賭けた新規事業開拓のリーダーに抜擢されたのが、当時は弱冠28歳だった伊庭代表理事だ。

伊庭雅俊・つるぎ木材加工協同組合代表理事

エコサイクルへの進化

設立当初はチップ材加工だけを行っていたが、原木の集荷が追いつかなくなり、2012年には高性能林業機械を導入して素材生産事業を開始した。翌13年には造林・保育事業を始め、14年にはミニトマトを栽培していたビニールハウスを再利用してスギのコンテナ苗生産もスタートさせた。伊庭代表理事は、「うちは後発組。先達に学びつつも、同じ手法では生き残れないから、チャレンジし続けてきた」と振り返る。そして、「機械設備への投資は一通り完了した。これからは伐って、使って、植えて、育てる『エコサイクル』の確立を目指す」と明言した。

年間売上高約6億円、設備投資は一段落し、新たなステージへ
つるぎ木材加工協同組合の年間売上高は約6億円。年間の事業量は、原木取扱高が約5万8000m3、素材生産量が約1万7000m3、植林・育林面積が約25ha、苗木生産量が約5万本となっている。
原木取扱高の主な内訳は、製材・合板用材が約1万8000m3、チップ用材が約4万m3。チップ材は、MDF工場向けに約7割、バイオマス発電所向けに約3割を供給している。

「エコサイクル」のイメージ(画像提供:つるぎ木材加工協同組合)

経営構造とエコサイクル戦略の展開

経営陣に当たる組合員は4名。従業員は27名で、内訳は、素材生産が12名、運送が6名、造林・苗木生産が3名、チップ工場が6名。事業量に応じて、外注方式で他の業者とも連携する。生産拠点や機械設備は、チップ工場が2か所、ビニールハウスが1か所、移動式チッパーが3台、簡易製材機が2台、林業機械が約30台、トラックが10台などとなっている。
この陣容をベースに同組合が目指している「エコサイクル」の概要は図のように描かれている。苗木生産からチップ材加工まで一体的に手がけているので、「トータルでコストダウンが図れる」(伊庭代表理事)のが強みだ。
発足以来、絶えざる挑戦を貫いてきた同組合は、新たに枝条のチップ加工にも取り組み始めている。伊庭代表理事は、「森林のポテンシャルを100%引き出していく」と先を見据えている。

(『林政ニュース』第714号(2023(令和5)年12月6日発行)「突撃レポート」より)

『林政ニュース』編集部

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