燃料電池を活用して野生動物撃退、金山町で実証中

山形県 林業機械

山形県金山町の「山形県遊学の森」で、可搬式の燃料電池を電源とする野生動物撃退装置の実証事業が行われている。

電源のない林内でも稼働し、オオカミが威嚇し続ける

撃退装置は、オオカミの姿を模しており、赤外線センサーが約20m以内で動物を検知すると、大きな威嚇音(唸り声)と強い光を出す。唸り声は約50パターンを揃えており、オオカミらしいものもあれば、人間の声などもある。タイマーで30分や1時間ごとに“吠える”タイミングを設定することもできる。撃退装置は固定式となっており、動物の通り道や被害の出ている場所などに設置することを想定している。

実証事業に取り組んでいるのは、金山町森林組合(山形県金山町、近岡伸組合長)と(株)カナモト(北海道札幌市、金本哲男社長)及び豊田通商(株)(愛知県名古屋市、今井斗志光社長)の100%子会社である豊通マテックス(株)(大阪府大阪市、安達雄介社長)。実施期間は、11月下旬までの予定。

金山町森林組合が実施主体となり、カナモトは撃退装置と給電用の燃料電池を貸し出し、豊通マテックスは燃料電池を載せた監視カメラを提供している。

金山町森林組合は、今年度(2026年度)から「遊学の森」の指定管理者をつとめている。林内でクマ(熊)の足跡が確認されたため、「利用者のリスクを少しでも減らしたいので実証事業を行うことにした」と常務理事の狩谷健一氏は話す。

「遊学の森」における撃退装置の設置場所は、クマ棚が確認されたところなどを選んだ。

通常、撃退装置は太陽光パネルと組み合わせて使用するが、太陽光が当たりにくい林内での利用を想定して、燃料電池だけで給電する仕組みにした。

40リットルで約1か月補給不要、通信環境改善にも期待かかる

燃料電池は、メタノールと空気中の酸素を化学反応させて電気をつくる。豊通マテックス燃料電池事業部燃料電池販売グループの田中秀典氏は、「電池という名前だと蓄電のイメージだが、どちらかというと発電機に近い」と説明する。

豊通マテックスが提供している燃料電池一式

燃料電池の発電時には水と微量の二酸化炭素(CO2)だけが排出され、発電音もほとんど出ない。今回の実証事業では、40リットルの燃料を積み、約1か月間補給なしで撃退装置を稼働させている。

サイズは、横幅が約1m、高さと奥行きは約50cm。燃料を外せば約50㎏と大人2人で持ち上げられる。豊通マテックスによると、燃料の保管量が80リットル未満ならば危険物貯蔵の届出は不要になる。また、燃料の残量はオンラインで監視しており、スマートフォンのアプリなどで確認できる。

豊通マテックス燃料電池事業部燃料電池販売グループの田中秀典氏(右)と金山町森林組合常務理事の狩谷健一氏

燃料電池の本体はドイツのエス・エフ・シー・エナジー社製で、豊通マテックスが輸入し、国内で組み付けて販売している。

8月時点での導入費用は、40リットル型の燃料電池を使用する場合で、撃退装置が60万円、燃料電池が350万円、燃料費が月7万2,000円。レンタルで利用することもできる。

燃料電池は、撃退装置以外にも用途を拡大できる可能性がある。金山町森林組合の狩谷氏は、「スマート林業を進める上では、林内の通信環境を改善することがとても重要になる。燃料電池とスターリンク(スペースX社提供)を組み合わせれば、安定した電源をベースにした通信インフラを整備・拡充できるのではないか」と期待を寄せている。

(2026年10月20日取材)

(トップ画像=燃料用電池で稼働する野生動物撃退装置)

『林政ニュース』編集部

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