(前編)「森林を活かす商社」を目指す阪和興業【遠藤日雄のルポ&対論】

海外 木材流通

再造林放棄地の解消が喫緊の課題となっている中で、宮崎県の南那珂森林組合(串間市、井上文利・代表理事組合長)は、管内の再造林率が約95%に達しており、必要経費の一部を国産材輸出による利益から生み出している。しかも、輸出業務に関わる商社が事業量に応じて助成金を出し、再造林を支援するという全国でも例をみない仕組みを軌道に乗せている*1*2*3。この先駆的な取り組みを他の地域にも広げることはできないか――思案を続けた遠藤日雄・元鹿児島大学教授は、助成金の“出し手”である商社の考えを聞くことにした。「対論」を申し込んだのは、阪和興業(株)(本社=大阪府大阪市・東京都中央区、中川洋一・代表取締役社長)。国内最大級の鉄鋼商社として地歩を築いてきた同社は、事業の多角化を積極的に進めており、2006年にインドへ丸太(原木)を輸出して以降、国産材の販路を海外に広げてきたパイオニアとしても知られる。商社の主たる機能は、商取引(トレード)をスムーズにすることだが、同社はそうした既成の枠組みにとらわれず、再造林支援を通じて国内森林資源の循環利用にも取り組み始めている。そこには、どのような狙いが込められているのか──。

世界の木材消費は増加基調、人口減の日本は需要創出が急務

阪和興業は、鉄鋼をはじめとして、食品、エネルギー、生活資材、機械など様々な商材を取り扱っている。住宅資材についても、北米や欧州のほか世界各地から各種の木材製品を輸入・販売する一方で、国産丸太の海外輸出にいち早く取り組み、マーケットを広げてきている。遠藤氏は、同社で住宅資材第一部長兼木材開発課長をつとめている松永真宏氏に問いかけた。

遠藤

はじめに、世界の木材需給動向について展望しておきたい。いわゆるトランプ関税や中東情勢など、唐突にマーケットを揺さぶるような出来事が起き、先行きは読みづらいがどうみているか。

松永部長

基本的に世界の人口は増え続け、それに伴って木材の消費量も伸びていくとみている。確かに目先の状況だけをとらえると、ロシアのウクライナ侵攻や中東情勢の緊迫化などで貿易活動が停滞し、需要が抑えられる局面になっているが、中長期的にみれば世界全体の木材需要は増加基調にある。各国・地域ともに環境への配慮を重視するようになっているので、循環的に利用できる人工林材へのニーズは益々高まっていくだろう。

遠藤

その中で、日本についてはどうみているか。

松永

人口が減少しており、従来からの住宅需要などが減っていくことは間違いない。したがって、新たな需要をつくり出していかなければならない。

遠藤

新規需要が見込める分野はあるか。

松永

有望な分野の1つは、非住宅建築物の木造化だ。とくに、2~3階建ての低層建築物を木造化することで大きな需要が生み出せる。
もう1つ、国産材の輸出も将来性がある。ここ15~20年で国内に大型の製材工場などが整備され、国際レベルの供給力がついてきた。円安に振れている為替レートも輸出に関しては追い風になる。
この2つの需要分野を開拓することが当社にとっても重要なテーマになっている。

松永真宏・阪和興業住宅資材第一部長兼木材開発課長

標準金物の開発で木造化推進、鉄鋼の「システム建築」を応用

遠藤

1つめのテーマである非住宅建築物の木造化では、まだS造(鉄骨造)などと比べてコストが高いと言われている。

松永

日本は地震が多く防火規制も厳しいので、木造ビルなどを建てようとしても、高い水準の耐震性能や耐火性能が求められ、コストアップの要因になっている。ただ、国が木造化を進める施策を打ち出し、関連する規制も順次見直しているので、状況は徐々に改善されてきている。
残る課題は、接合部の金物が標準化されていないことだ。物件ごとに金物をオーダーメードしているので、汎用性がなく価格も高くなっている。S造などで使用されている金物のように標準化されていると価格が抑えられて使いやすくなる。

遠藤

阪和興業は、金物を含めた鉄の専門商社としての存在感が大きいが、何か取り組んでいることはあるのか。

松永

現在も当社の売上げの約40%は鉄鋼関連が占めており、取引先も多い。こうした強みを活かして、木造ビルなどに使われる接合金物の開発を進めている。
開発にあたっては、木造ビルなどを合理的に建設できるシステムの構築も視野に入れている。地方の大工・工務店やRC造を手がけてきた建設会社などからは、「木造はやったことがないので、どうしたらいいのかわからない」という声が聞かれる。こうした悩みを解消するために、柱や梁などの長さやピッチを集約してアイテムを絞り、量産化によってコストダウンを図りたい。その上で、構造材や金物だけでなく、屋根・壁・基礎までを含めて一括で受注できる体制をつくることを考えている。鉄鋼には、「システム建築」と呼ばれる工法があり、規格化された部材で工場や倉庫を安価に短工期で建てている。その木造版を目指したい。

遠藤

なるほど。鉄に強い阪和興業ならではの取り組みだ。

松永

木造には、ライフサイクルを通じた二酸化炭素(CO2)排出量が少ないといったメリットがある。そうした特長もわかりやすく“見える化”してアピールしていきたい。

付加価値のある製品は米国などターゲットを絞って輸出する

遠藤

もう1つのテーマである国産材輸出にはどう取り組んでいく方針なのか。

松永

弊社は、20年ほど前から国産丸太の輸出に取り組んできており、仕向け先は、中国、台湾、韓国といった東南アジアが中心になっている。
今後は、製品輸出にシフトしていく必要がある。その際にターゲットとなる仕向け先は、米国とオーストラリアだ。この両国は人口が増えており、所得水準も高く、付加価値のついた木材製品を買ってくれるマーケットと言える。

遠藤

大手住宅メーカーなども、両国の企業を買収するなどして盛んに市場開拓を進めている。

松永

そうした動きに合わせた住宅部材の供給力を強化していきたい。その際にポイントとなるのは、輸出先の規格に合わせることだ。これは単独の企業で対応するのは難しく、日本木材輸出振興協会がスギ・ヒノキを使った2×4(ツーバイフォー)材で米国製材規格委員会(ALSC)から設計強度の認可を取得したことは大きな足がかりになる*4。

遠藤

国内で米国向け2×4材を安定的に生産する体制づくりも急がれる。

松永

国内の製材工場のラインは在来軸組工法住宅向けに設計されていて、長さが3m・4mの部材を生産しているが、今後は2×4材のサイズに合わせたラインを整備していかなければならない。新たな設備投資が伴うことになり、民間主導でやれるところもあるが、国と連携して資金面も含めてサポートしていく体制が必要だろう。その際に、当社のような商社が米国など海外における木材製品に関する最新のニーズを収集・分析し、国内の関係者に的確に伝えていくことがより重要になると考えている。

遠藤

これから国産材の輸出先はどこまで広げるべきだろうか。

松永

2×4材や合板などの付加価値のついた製品に関しては、所得水準やGDPが高いエリアに優先的に輸出していくべきだろう。木材という商品は、運賃の占める割合が高い。アフリカなどへ輸出しようとしても、距離が遠くてコストが嵩み、競争力が出てこない。ターゲットとなる国や地域を絞っていく必要がある。
輸出の実績が多い東南アジアは、まだ付加価値のついた木材製品を買える層が限られるので、当面は丸太で出荷・販売することが現実的だろう。(後編につづく)

(2026年9月15日取材)

(トップ画像=阪和興業は20年前から国産材の輸出に取り組んでいる、画像提供:阪和興業)

遠藤日雄(えんどう・くさお)

NPO法人活木活木(いきいき)森ネットワーク理事長 1949(昭和24)年7月4日、北海道函館市生まれ。 九州大学大学院農学研究科博士課程修了。農学博士(九州大学)。専門は森林政策学。 農林水産省森林総合研究所東北支所・経営研究室長、同森林総合研究所(筑波研究学園都市)経営組織研究室長、(独)森林総合研究所・林業経営/政策研究領域チーム長、鹿児島大学教授を経て現在に至る。 2006年3月から隔週刊『林政ニュース』(日本林業調査会(J-FIC)発行)で「遠藤日雄のルポ&対論」を一度も休まず連載中。 『「第3次ウッドショック」は何をもたらしたのか』(全国林業改良普及協会発行)、『木づかい新時代』(日本林業調査会(J-FIC)発行)など著書多数。

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