重度障がい者向けの木造3階建て施設が東京都練馬区内で竣工し、4月3日に完成見学会が開催された。障がいを持つ人達と共生する拠点を木材を活かして整備する新たな取り組みとして注目されている。
新設されたのは、社会福祉法人東京都手をつなぐ育成会(東京都新宿区)が運営する多機能型地域生活支援拠点「石神井いとなみの起点」。1時間耐火構造の木造3階建てで、敷地面積は984.66m2、延床面積は1,383.39m2。主な入居者は、サポートの必要度が最も高い障害支援区分6の障がい者や強度行動障がいのある人。施設の構造部分だけでなく3階の居室の壁や床を全面的に木質化するなど、木の温かみと柔らかさが感じられるようになっている。また、地域住民との交流を促すデッキスペース「まちなか広場」を設けるなど、障がい者を地域全体で支えるデザインとしている。

建設にあたっては、在来軸組工法とLVL被覆耐火構造材による木造ラーメン構造を組み合わせて用いた。1階の地域交流スペースにラーメン構造を採用して構造材を現しにし、それ以外のスペースと2・3階部分は在来軸組工法でつくり上げた。
施設全体の木材使用量は208m3で、構造材には欧州アカマツ、ベイマツなどを使い、外装のルーパーに多摩産材を用いている。
木造ラーメン構造と在来軸組工法を併用して「やさしい空間」を構築
「石神井いとなみの起点」の設計・管理はケアスタディ・スタジオ・クハラ・ヤギ設計共同体、構造設計は桜設計集団構造設計室、施工は飛島建設(株)が担当した。
(株)スタジオ・クハラ・ヤギ(東京都千代田区)の久原裕代表は、「木造によって入居者にやさしい空間づくりを目指した」と話しており、「ラーメン構造と在来軸組工法では強度が異なるため全体が馴染むように細かく調整した」という。また、上下階で居住者の生活空間が重なる場合は木製遮音床を採用して、「RC(鉄筋コンクリート)造の集合住宅と同等の遮音性能に近づけた」とも説明している。

施工を担った飛島建設(東京都港区)は、2024年6月にナイス(株)(神奈川県横浜市)とともに(株)ウッドエンジニアリング(同)を設立しており、木材調達などに連携して取り組んだ。担当の後藤隆之作業所長は、「ウッドエンジニアリングとのコラボレーションは初めてだったがスムーズにいった」と手応えを口にし、「社内で木造についての勉強会を重ね、知見を深めている。今後も木造非住宅分野を伸ばしていきたい」と意欲をみせている。
(2026年4月3日取材)
(トップ画像=「石神井いとなみの起点」の外装ルーバーには多摩産材を用い、地域住民との交流を促すランドマークにもなっている)
『林政ニュース』編集部
おかげさまで、1994年の創刊から32年目に入りました! これからも皆様の手となり足となり、最新の耳寄り情報をお届けしてまいります。