林木育種センター九州育種場(熊本県合志市)と九州大学(福岡県福岡市)は、土を使わずにさし木苗を生産する新技術を開発し、特許を取得した。スギさし木コンテナ苗を効率的に大量生産することができ、年末までにマニュアルを作成・公開して普及を図ることにしている。
林木育種センター九州育種場と九州大学が共同開発
従来のスギさし木コンテナ苗生産では、さし穂を土にさしつけて発根させた後にコンテナに移植し、苗木に育てているが、さしつけ用の土の準備や、発根した穂の掘り取り作業などで手間や労力がかかる。また、土から掘りとった後でなければ発根の有無や程度がわからず、移植のタイミングを判断することが難しかった。
新開発した手法では、さし穂全体を空気中に露出するように立て、定期的にミスト散水することによって、安定的な発根が可能となり、発根の状態もリアルタイムで確認できる。さし木苗づくりにつきものの重筋労働から解放されるのは大きなメリットとなる。

5か年かけて画期的技術確立、スギ以外の樹種含め本格普及へ
九州育種場と九州大学が開発した土を使わないさし木苗生産技術は、通称「エアざし」と呼ばれる。2015年度に空中発根の現象を確認し、5か年をかけてミスト散水等で安定的に発根させる手法を確立、5月27日付けで特許を取得した(発明の名称は「さし穂の発根装置」、特許番号:第6709449号)。
さし木苗は、成長性や材質、少花粉などの優れた品種特性をそのまま継承できる利点がある。だが、スギなどの発根性は品種によって異なり、気温や水分条件などで発根状況が変わるため、勘と経験に頼る部分が多かった。「エアざし」によってこうしたネックが解消され、関係者の間では「画期的な新技術」と評価されている。とくに、古くからスギのさし木造林が行われ、全国に先駆けて主伐・再造林期を迎えている九州では本格普及への期待が大きい。
現在、九州育種場は、九州大学、宮崎大学、大分県農林水産研究指導センター、宮崎県林業技術センター、鹿児島県森林技術総合センター、長倉樹苗園、林田樹苗農園と共同研究機関をつくり、イノベーション創出強化研究推進事業により「エアざし」のコスト分析など実用化研究を進めている。その成果を年末までにマニュアル化して発表するとともに、スターターキットなども用意する予定だ。「エアざし」は、スギだけでなくヒノキやコウヨウザンなどの林業用樹種でも使えることが確認されており、苗木生産の現場をどう変えていくかが注目される。
(2020年9月1日取材)
(トップ画像=発砲スチロール製ブロックとメッシュパネル等でつくった支持装置にスギのさし穂を立て、定期的にミスト散水をして苗木を育てる)
『林政ニュース』編集部
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