アカマツ短尺材を経木・家具で活かす!(株)やまとわ【突撃レポート】

長野県 家具・木工品等製造業

アカマツ短尺材を高付加価値商品に生まれ変わらせている企業が長野県伊那市にある。創業5年目に入った(株)やまとわ(中村博・代表取締役)だ。家具職人とデザイナーがタッグを組んで誕生した同社は、多様な経歴を持つ人材が集うパイオニア企業としても知られている。(文中敬称略)

長さ90㎝以下でもOK! 高付加価値商品「shiki」に“変身”

やまとわの看板商品は、経木と家具。ともに長さ90㎝以下のアカマツ短尺材を使ってつくっており、年間の原木消費量は約180㎥に及ぶ。建築や家具の原料となる用材の長さは2〜4mが当たり前であり、1mに満たないものには目が向けられない。ところが同社は、アカマツの枝がおよそ90㎝間隔で生え、短尺材であっても四方無節の優良材がとれることに着目し、高付加価値商品に〝変身〞させている。

その1つが経木だ。古くから包装材として使われてきた経木を生産できる工場は全国に50社程度あるといわれている。その中で同社は、「shiki(紙木)」のブランド名をつけて高品質な経木を生産し、一般消費者向けに販売している(価格は20枚入り480円など)。

信州経木「shiki」、厚さ0.18㎜、幅15cm、長さは24cmと48cmの2種類がある

「shiki」は、アカマツ短尺材を60㎝程度に玉切りし、テーブルソーで角材にした後、専用機械で薄くスライスし、脱水機のような機械で乾燥させてつくり上げる。

アカマツは、伐採直後の水分を多く含んだ状態であるほど加工しやすいが、長期間土場に置くと青変菌などが入りやすくなる。そこで、同社は、1〜2週間という短期間で最終商品に仕上げることで青変菌などに犯されることを防いでいる。

持ち運べる家具「パイオニアプランツ」を開発、2拠点居住にも対応

やまとわのもう1つの看板商品である家具には「パイオニアプランツ(pioneer plants)」のブランド名をつけている。軽くて持ち運びしやすいのが特長だ。脚の長さが約82㎝あるイスでも、重さは約2.3㎏に抑えられている。

「パイオニアプランツ」の家具、構造パーツに山岳ロープを使って軽量化している

「パイオニアプランツ」の家具は、現在増えている2拠点居住者への対応を睨んで開発された。同社社長の中村博(51歳)は、オーダーメイドの高級家具をつくり、高所得者層向けに販売してきた経験を持つ。しかし、それだけでは若年層に木のよさを伝えられず、未来の消費者を育てられないとの危機感が募り、「パイオニアプランツ」を立ち上げた。

中村は、「パイオニアプランツ」のユーザーについて、「新しい生活スタイルの実践者、具体的には30代前半」と見定めている。そこには、「弊社には若い社員が多く、2拠点生活を行っている者もいるから」というバックグラウンドがある。

“つくる力”と“伝える力”、2つの異なる個性が推進力に

中村は、もともと郵便局の営業マンだった。だが、ものづくりがしたい一心で29歳のときに伊那市で高級建具を生産している大津屋木工に転職。同社の親会社であるKOA(株)(長野県箕輪町、花形忠男社長)が信州大学とともに開講している「KOA森林塾」で日本林業の現状を知り、地域産材にこだわった家具づくりに本格的に取り組むようになった。

職人肌の中村は、「僕はただ組子をつくるために入社したのではない。机や椅子など様々な家具をつくりたい」とKOAの会長に直談判し、その翌日に大津屋木工所からクビを宣告され、KOAに再入社した逸話を持つ。そして、「KOA森林塾」の木工部門に所属し、オーダーメイド家具をつくり続け、2016年10月にやまとわを設立した。

中村博社長(右)と奥田悠史取締役(左)

中村とともに同社を立ち上げたのが取締役の奥田悠史(32歳)。奥田は、信州大学で森林科学を学び、ライター・編集業務に3年間携わった後、フリーランスのデザイナーとして独立し、イベントで中村と出会って意気投合した。今は出身地である三重県伊賀市と伊那市で2拠点生活を実践している。

家具職人として“つくる力”を持つ中村と、デザイナーとして“伝える力”を持つ奥田。2つの異なる個性が相乗効果を生み同社の推進力となっている。

元林野庁職員、商社マンなど多彩、移住者&女性比率が50

現在、やまとわは、①半農半林の生業づくりに挑戦する農と森事業部、②経木や家具などをつくる木工事業部、③森の企画提案を行う森事業部、④薪ストーブの販売などを行う暮し事業部の4部門を持つ。社員は18名で、平均年齢は約37歳、移住者比率、女性社員比率はともに50%で、社員の経歴も元林野庁職員やプログラマー、商社マンなど多彩だ。生産拠点である工場「36office」は、周囲を桜並木で囲われ、春になると社員一同でお花見をするのが恒例行事になっている。  

同社の今後の展開方向について、奥田は次のように話す。「弊社の製品はマーケットインではなく、プロダクトアウトの発想で開発している。届けたい物があり、伝えたい人がいる。だから、商品とともにストーリーを重視したい」。これを受け中村は、「来年度は新たに企業や官公庁向けのセミオーダー家具も開発していく」と構想を述べ、こう力を込めた。「弊社のビジョンである『森をつくる暮らしをつくる』を広げていきたい」。

(2021年1月15日取材)

(トップ画像=信州経木「shiki(紙木)」の使用例)

『林政ニュース』編集部

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