間取りを描けば家も予算も瞬時にわかる、部材は事前加工して現場へ
「Nesting」は、VUILDが独自に開発した設計支援アプリ(アプリケーションソフトウェア)。アプリ上で望んでいる間取りを描くと、瞬時に家のかたちとなり、同時に概算の見積額も算出される。間取りの変更などにも自在に対応するので、自分が欲しい家がいくらでできるのかを何度でも試しながらプランを練り上げていくことができる。
住宅部材の加工には、同社が普及を進めている3D木材加工機「ShopBot」などを使用。事前に工場で切り刻んだ各種部材を施工現場に持ち込んで組み立てるだけで家が建ち上がる。上棟を含めた躯体工事には2~3日を要するだけだ。

この画期的なシステムを用いた初の物件である弟子屈町の家は、延床面積24坪の平屋建て。柱と梁を一体化させた工法によって、広々とした室内空間を確保した。冬場になるとマイナス20度にも冷え込む厳しい気候風土に合わせて高性能の断熱材や木製のトリプルサッシを採用。温泉熱や太陽光を使うことでエネルギー消費を抑え、真冬でも半袖で過ごせる“エコな家”となっている。
2023年までに100棟の供給目指す、林業とのつながりを強化
VUILDを率いる秋吉代表は、「ものづくりの民主化」を掲げ、家具などの木製品を誰でもつくれるネットワークを広げている。「ShopBot」を導入している製材所や工務店、木工所は全国80か所以上に達しており(10月末現在)、とクラウドデータ支援サービスの「EMARF」によるデータサポートを利用する工場や事業所も着実に増えている。このネットワークから供給されるアイテムに「家」が加わったことで、同社のビジネスは「建築の民主化」を推進する段階に入った。
「Nesting」の第2号物件は秋田県五城目町で計画されおり、5世帯が入居できる長屋形式の共同住宅をセルフビルドで建てることにしている。秋吉代表は、「2023年までに100棟の供給を目指す」としており、これから施主の“想い”を実現する様々なタイプの家が各地にできていくことになる。

「Nesting」による家づくりは、林業・木材産業の現場にも影響を及ぼしそうだ。秋吉代表は、「ShopBotのある地域の工務店などと連携して、地元の丸太を使っていきたい」との方針を示しており、「既存の流通には乗らない国産材を有効活用できれば」とも話している。
「家は買うものではなく自分でつくるものに戻していく」という事業構想は、「行き過ぎた工業化の前の林業を取り戻すことにもなる」という。「Nesting」によって4階建てまでの非住宅建築物を建設することも計画されており、国産材の新たな“出口”が広がっていきそうだ。
(2025年11月10日取材)
(トップ画像=「Nesting」の入力画面)
『林政ニュース』編集部
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