ペット用品の猫砂にスギのおが粉を活用している(株)杉のチカラ(埼玉県久喜市、高橋則之・代表取締役)が事業拡大に向けて資金調達を行っている。同社が生産・販売している「命の猫砂 杉にゃん」は、猫の健康管理に好影響を与えるとの評価が定着してきており、加工設備を拡充して増産を目指すことにした。必要資金を確保するため、(株)ユニコーン(東京都新宿区、安田次郎・代表取締役)が主催する株式投資型クラウドファンディングの第33号案件に採用されるなど増資に挑戦しており、高橋社長は、「5年後までにIPO(上場)を目指す」と意気込んでいる。
天然乾燥+独自製法を確立、障害者福祉施設と連携して生産
「命の猫砂 杉にゃん」は天然乾燥したスギのおが粉を独自の製法で固めたもの。完全無添加で、防腐剤・防カビ剤・凝固剤を一切使用せず、樹木成分のフィトンチッドによる消臭・殺菌効果もある。
同社では、協力会社からおが粉を購入→栃木県の障害者福祉施設のビニールハウスで天然乾燥して含水率を14%程度まで落とす→おが粉を撹乱して含水率を22%まで戻す→ペレット製造機で成型という工程を経て猫砂をつくっている。一連の加工法について2018年に特許を取得した。
月間のおが粉使用量は約10t。製法のポイントである天然乾燥は、おが粉を薄く広げたトレーを数千枚使用し、何度も取り替えて行う。乾燥期間は夏場で3日間、冬場で1週間を要する。
「猫とスギの相性はいい」、健康ニーズに応えながら世界へ
高橋社長は、1983年から佐川急便(株)で勤務した後、福島県奥会津地域で大工になった。愛猫家のリフォーム案件を手がける際に、天然乾燥したスギで爪とぎやキャットタワーなどをつくっていたが、あるとき愛猫家からおが粉の注文が入り、調べたところ猫砂に使っていることがわかった。これに着目した高橋社長は、猫用ペット用品の開発に取り組み、2020年4月に杉のチカラを創業した。

「猫とスギの相性はいい」と高橋社長は言う。スギの柔らかさは建材としては欠点になるが、ペットにとっては触ってやさしい長所になる。「スギの成分も猫にとって非常に心地がいい。マツのピネンやヒノキのリモネンでは中毒症状を引き起こすこともある」と高橋社長は説明する。
従来の猫砂では、猫が舐めたり、食べたりして健康被害が生じる懸念がつきまとっていたが、「杉にゃん」の使用者からは、「ウチの猫が元気を取り戻した」との声が相次いでおり、現在約500名が定期購入している。ペット市場でもオーガニック製品が伸びており、同社によると2030年には約54億米ドル規模になるといわれている。高橋社長はもともと犬派だったが、「猫にメロメロになった」と笑い、「増資による積極的な設備投資で世界に通用する『命の猫砂 杉にゃん』を確立したい」と意欲をみせている。
(2022年1月15日取材)
(トップ画像=「命の猫砂 杉にゃん」、3種類あり、1袋3kgで1,650円から)
『林政ニュース』編集部
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