改正製材JAS施行、使用実態を踏まえ合理化図る

全国 木材流通 法律・制度

木材需要の変化などを踏まえて改正された製材JAS(製材の日本農林規格)が7月30日に施行された。構造用製材の曲げ性能に関する基準を変更するなど、ムク(無垢)製材の使用実態に合わせた見直しを行っており、JAS製品の利用拡大につながるかが注目される。

曲げヤング係数(強度)の基準見直し、検査方法も時代に合わせる

主な改正点は、①曲げヤング係数(強度)の基準の変更、②目視等級区分の検査方法の追加、③寸法許容差の合理化、④標準寸法表の簡素化、⑤機械等級区分における未仕上げ材区分の廃止、⑤木材保存処理の試験方法の追加――などとなっている。

これらのうち、①曲げヤング係数の基準については、これまでの上限値と下限値の設定を見直して、平均値と下限値を定めることにした(トップ画像及び図参照)。従来の基準では、検査のサンプルに上限値以上の強度を持つ製材が含まれていても不合格とされ、構造耐力上は問題ない製材であっても格付されない実態があった。今回の改正で上限値を撤廃したことで、強度の高い製材が含まれていても格付が可能になる。

 曲げヤング係数(強度)のこれまでの基準と新基準

②目視等級区分の検査方法に関しては、構造用製材の測定方法に「カメラ撮影」と「レーザー照射等」を追加した。撮影技術の進展を反映した見直しで、材面測定機器のカメラ撮影を使った欠点判別が可能となり、検査スピードの向上が見込まれる。

③寸法許容差については、含水率20%以下の構造用製材(SD20)について、小口の寸法許容差の下限を「(マイナス)0㎜」から「-0.1㎜」に改めた。これにより、自然乾燥によって材が収縮した場合でも格付されるようになる。

解説 低迷が続く格付率、複雑な制度全体の見直しも待たれる

製材JASの改正は、JAS法(日本農林規格等に関する法律)に基づいて5年ごとに行われている。今回の見直しは、都市部を中心に中高層の木造ビルが増える一方、2階建て木造戸建て住宅を対象にした4号特例の適用範囲が縮小されるなど、木材利用を取り巻く状況が大きく変わる中で行われた。

改正にあたっては、農林水産消費安全技術センター(FAMIC)が関係団体等からの要望をまとめて原案を作成して国(農林水産省)に提出。これをもとにした改正案についてパブリックコメントを行った上でJAS法を設置根拠とする日本農林規格調査会が正式に決定し、今年(2025年)1月31日に関連告示を改正、7月30日に施行した。

製材JASを巡っては、格付率=普及率の伸び悩みが長年の課題となっている。国内で流通している製材(860万m3)のうちJASの格付がされているのは13%、構造用製材に限っても27%にとどまる(2022年度時点)。これに対し、集成材の格付率は93%、合板は77%と高い(参照)。

今回の改正で曲げヤング係数の基準を見直したことなどは、「集成材などのJASに沿っている」(林野庁木材産業課)ものであり、総じて、「(ムクの)製材もエンジニアードウッドとして評価するようになってきている」(同)のが実情だ。

林産物のJASは、製材のほか素材、2×4(ツーバイフォー)製材、集成材、合板など13品目について定められている。その中で製材に関しては、造作用、目視等級区分構造用製材、機械等級区分構造用製材、下地用、広葉樹の5品目で品質や表示の方法を規定しており、率直に言って複雑でわかりにくい。技術開発や消費のスピードが加速している中で、従来ペースの改正作業を続けているだけでいいのか。林産物制度全体の簡素・合理化を含めた根本的な見直しも待たれる状況になっている。

(2025年7月30日取材)

(トップ画像=曲げヤング係数(強度)の基準見直しのイメージ)

『林政ニュース』編集部

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