IT大手のソフトバンクが2つの森林保全プロジェクトを開始

全国 森林経営・管理

IT大手のソフトバンク(株)(東京都港区、宮川潤一・代表取締役社長執行役員兼CEO)は、7月30日に新たな森林保全プロジェクトを2つスタートさせた。

1つは、全国47道府県市の森林整備などを支援する「日本森林再生応援プロジェクト」。もう1つは、消費者参加型植林貢献プログラム「NatureBank(ネイチャーバンク)」。年間売上高が6兆円を超える巨大企業が日本の森林づくりに本格的に乗り出してきた。

47道府県市に15年間で40億円余を寄付、約180万本の植林を見込む

「日本森林再生応援プロジェクト」では、企業版ふるさと納税制度を利用して、2040年までの15年間で47道府県市に対し総額40億円余を寄付し、森林保全活動を支援する。対象となる自治体は東京都を除く46道府県と、東京都の八王子市。同社の本社が港区にあるため同制度によって東京都に直接寄付することができず、検討の結果、都下の八王子市を支援先に選んだ。

今後、各自治体と協議を進め、地域の実情に応じた森林づくり活動を進める。全額を植樹に充てた場合、植林本数は約180万本に達すると見込んでいる。

プロジェクトの趣旨を説明する宮川・ソフトバンク代表

「NatureBank」で消費者のエコ活動を“見える化”、各種のキャンペーンも実施

「NatureBank」では、ユーザーのエコ活動を“見える化”する消費者参加型植林貢献プログラムを展開する。

同社のグループ企業が提供する16のサービスの利用頻度に応じて二酸化炭素(CO2)の排出抑制効果を計算し、これに相当する植林を行っていく。ユーザーの日常的なエコ活動が森林づくりに直結することをわかりやすく伝えるために、特設サイトやLINE公式アカウントを通じて“見える化”を図る。また、毎月第1木曜日を「NatureBankの日」に定めて、各種のキャンペーンを行っていく。参加するユーザーが増えていけば、2030年までの5年間で、累計約35万本の植林が可能としている。

「NatureBank」の対象となる16サービス

クレジット化などには手を出さず「小さな1歩を大きな流れに」

同社が新たに進める森林保全プロジェクトを通じて、J-クレジットの発行なども見込めるが、現時点でマネタイズ(収益化)に踏み出す予定はない。この点について、同社の池田昌人・CSR本部長は、「(今回のプロジェクトは)各自治体の方々と連携し、植林を通じてより豊かな未来をつくっていくことが目的。経済活動に結びつけることは検討していない」と説明した。

池田昌人・ソフトバンクCSR本部長

また、宮川代表は挨拶の中で、「当社は電気通信事業者であり、AI推進企業でもある。その立場から気候変動対策に真摯に取り組むことを考え、全国の森林保全活動を支援していくことにした。まずは小さな1歩だが、大きな流れにしていきたい」と強調した。

自治体間の交流も進めた

プロジェクトの発表後は、各自治体の森林保全活動をアピールする場も設けられ、情報交換などが行われた。

停滞感が漂う日本の林業に約40億円という新たな資金が投じられることで、現場にどのような変化が生じるのか。今後の推移が注目される。

(2025年7月30日取材)

(トップ画像=7月30日に東京都内で行ったプロジェクト発表記者会見には浅尾慶一郎・環境大臣や連携する自治体のトップらが駆けつけた)

『林政ニュース』編集部

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