「突板のプロフェッショナル」として完全オーダーメイドにも対応
恩加島木材工業は、1947年にミシンテーブルと突板の製造業者として創業した。1970年から80年にかけて工場を新設して生産能力を大幅に拡充し、直張りフローリングやコルクフローリングなどの独自製品を開発してきた。
1995年には、突板・化粧合板のショールーム「スタジオoak」をオープン。設計士やデザイナーなどに向けて、突板の魅力を発信し続けている。
「突板に関することなら何でもご相談下さい」──同社の会長で、全国天然木化粧合単板工業協同組合連合会(東京都文京区)の会長でもある山下光明氏は、こう語る。
突板業者は、同業他社だけでなく、ビニールクロスメーカーなどとの熾烈な競争に晒されている。資本力の勝る大手企業は、規格化と大量生産によってコスト削減を進めており、真正面から太刀打ちするのは難しい。
そこで同社は、差別化を徹底する路線をとってきた。自社で開発した製品が大手企業に模倣されたら、スッパリと見切りをつけて、新たな製品をつくる。これを繰り返しながら辿り着いたのは、ホテルやスーパー、公共施設向けの完全オーダーメイド製品だ。これまでに、ザ・リッツ・カールトン 京都(京都府京都市)やパレスホテル東京(東京都千代田区)、ホテルオークラ(東京都港区)などの一流ホテルに納品してきた。札の辻スクエア(東京都港区)などの木質内装化にも参画している。

国内外の天然木を幅広く取り扱い、不燃ボードで国交大臣認定を取得
恩加島木材工業の主力製品である「PANESSE(パネッセ)」シリーズは、0.2mm〜0.8mmの突板をMDFなど様々な基材と組み合わせた上で、不燃化や難燃処理を施している。取り扱い樹脂は、海外産のウォールナットやホワイトオークから国産のカバやナラなど幅広く、天然木本来の質感を活かしているのが特長だ。


ホテルや商業施設などでは、不燃や難燃の認定を取得した製品でなければ通用しない。だが、薬剤注入の不燃木は、白華問題や反りなどが発生しやすく、重く、割れやすく、コストが高いなどの課題があった。同社は、長年にわたる研究の末、これらの課題を解決する軽量で施工性に優れた不燃ボードを開発し、様々な国土交通大臣の個別認定を取得している。
製品の開発と製造を支えるのは、熟練の技を持つ職人と、国内外から調達した最新鋭の加工設備だ。現在は45名の社員が在籍しており、設備投資を継続的に行っている。

同社の強みは、創業時から塗装設備を整えて、製品の仕上がりにまで目配りしていることだ。ウレタンクリア塗装や着色塗装だけではなく、UV塗装、抗ウイルス塗装などの特殊塗装も内製化し、顧客が望むイメージを具体化している。
ウェブマーケティングなどにも注力、次世代が育ち未来型の布陣にシフト
恩加島木材工業は、ウェブマーケティングにも力を入れている。
同社のウェブサイトでは、取り扱っている樹種の原産地、価格、入手レベル、色、用途、木柄などが検索できる。とくに、価格と入手レベルについては、5段階評価で客観的な目安を示している。また、用途検索では、オフィスや商業施設、ホテルなど使用シーンにあった製品を絞り込めるようになっている。
地域産材の活用に関するコーナーもあり、長野県産スギ材を使用した長野駅コンコース内の天井など、具体的な事例を紹介している。突板の選び方やデザインのトレンドなどに関する情報も定期的に発信して、新規顧客の獲得につなげている。

経営体制については、2023年8月に山下光明氏が社長から会長となり、弟の喜代次氏が社長に就任した。専務取締役には喜代次氏の子息である喜章氏、常務取締役には光明氏の子息である貴弘氏が就いており、未来を見据えた布陣を整えている。

山下会長は、今後の事業展開について、「インバウンド向けのホテルや店舗などでの需要が増えている。住宅の天井など開拓余地のある市場もある。業界を挙げて積極的に攻めていきたい」と明確な方針を打ち出している。
(2025年3月27日取材)
(トップ画像=恩加島木材工業の本社)
『林政ニュース』編集部
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