【挑む人】国産ヤマブドウワインよ世界に届け! 鈴木直子氏

【挑む人】国産ヤマブドウワインよ世界に届け! 鈴木直子氏

森の恵み・ヤマブドウを原料にした国産ワインで世界市場を窺う木材コーディネーターがいる。森林研究・整備機構(茨城県つくば市)の監事や木和堂(神奈川県鎌倉市)の代表をつとめる鈴木直子氏だ。鈴木氏らが2022年に商品化したヤマブドウワイン「Kuzumaki Story1」は、発売後わずか1週間で完売し、2023年にはグッドデザイン賞を受賞した。仕掛け人の鈴木氏は、“次なる仕込み”を着実に進めている。

“やま”と“まち”をつなぐ木材コーディネーターとして活動

「未来の子ども達によりよい環境を引き継ぐために、森林資源を活かしていきたい」──こう口にする鈴木氏は、1978年に(株)ブリヂストン(東京都中央区)に入社、その後、設計事務所、住友林業緑化(株)(同)などを経て、2000年にシックハウス対応の国産材産直住宅をプロデュースする「住工房なお」を設立。“やま”と“まち”をつなぐ木材コーディネーターとして活動している。

木材コーディネーターの鈴木直子氏

2015年には、林野庁所管の国立研究開発法人である森林研究・整備機構の監事に就任。同機構初の女性役員となった。「人との縁があって、ここまで来ることができた」と話す鈴木氏は、ヤマブドウワインについて、「10年以上前に会った山梨のワイナリーの一言から始まった」と振り返る。

樽にも国産のミズナラを使用、「テロワールの違いを引き出す」

原料に国産のヤマブドウを使う「Kuzumaki Story1」は、樽にも国産(岩手県産)のミズナラ材を用いている。国内のワイナリーで使用されている醸造樽は、アメリカやフランスなどから輸入されたものばかり。鈴木氏によると、国産樽と国産ブドウでつくった国産ワインは本邦初。アルコール度数は10.5%と辛口な味わいに仕上がっている。

希少価値の高いヤマブドウワインは、鈴木氏がコーディネートしながら(株)岩手くずまきワイン(岩手県葛巻町、鈴木重男社長)が製造・販売している。樽は、国内唯一の専門メーカー・有明産業(株)(京都府京都市、小田原伸行社長)が製造、樽用材の調達加工は(株)西野製材所(岐阜県飛騨市、西野真徳社長)が担っている。

研究機関との連携も進めており、山梨大学ワイン科学研究センター(山梨県甲府市)と森林研究・整備機構が樽に使用される樹種ごとに成分を分析し、味や香りの特性などを調べている。

鈴木氏は、「ワインはテロワール(風土)の違いが味に表われる」と述べ、「国産ワインでも地域の個性を引き出していきたい」と言葉を続けた。

人材の育成や製造拠点の整備を進め、オールジャパンで世界へ

鈴木氏らは、「Kuzumaki Story1」に続く商品として、国産樽とフランス樽で仕込み、テロワールの違いが感じられる飲み比べセットなどを検討している。

また、樽用材の端材やヤマブドウの残渣を有効活用して、ヤマブドウで染めたブートニエール(スーツ用の花飾り)や従業員の制服を開発しており、これから広く普及していく考えだ。

今後の展開について、鈴木氏は、「森林とワインの結びつけを強め、人材を育成し、製造拠点の整備に取り組みたい」と言い、①研究機関との連携強化、②人材育成などを行う団体の設立、③樽の製造工場を増やすための技術指導ネットワークの構築──などを課題にあげた。

「目指すはオールジャパンのワインが世界で評価されること。そうなれば日本の森林の価値が上がる」と鈴木氏は目を輝かせている。

(トップ画像=「Kuzumaki Story1」、720ml、5,500円(税込)、画像提供:鈴木直子氏)

『林政ニュース』編集部

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