王子ホールディングスが国内社有林の経済価値を約5,500億円と初試算

王子ホールディングスが国内社有林の経済価値を約5,500億円と初試算

製紙大手の王子ホールディングス(株)(東京都中央区、磯野裕之社長)は、国内の社有林が持つ多面的な機能の経済価値を初めて算出し、総額で年間約5,500億円相当になると9月11日に発表した。グローバル企業は、TNFD(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures:自然関連財務情報開示タスクフォース)宣言などへの対応を迫られており、環境貢献度を自己評価することで、企業価値の向上につなげる狙いがある。

同社は、国内外合わせて約63万5,000haの社有林を保有している。今回評価したのは、国内の「王子の森」と呼んでいる約18万8,000ha。経済価値の評価は、国(林野庁)が公表している手法を用いて行った。年間約5,500億円の内訳は、土砂流出・崩壊防止が2,750億円、水源かん養が2,040億円、生物多様性の保全が430億円、大気保全・保健休養が280億円。

調査は、国内のスタートアップ企業と連携して、国内約650か所に点在する「王子の森」の生物多様性の重要度をスコアリング(点数化)し、とくに高いスコアを示した北海道の猿払山林をフィールドに選定。その後、海外のスタートアップ企業との協働により、音声センサー、ドローン、カメラ、環境DNAなどを用いてデータを取得し、AIによる総合的な解析を行った。

同社の広報担当者は、「将来的には、カーボン・クレジットにとどまらず生物多様性や水の保全などに関するクレジットも創出できないかと考えている。今後も自然資本の可視化、価値最大化に取り組んでいく」と話している。

(2024年9月11日取材)

(トップ画像=経済価値評価の概念図、王子ホールディングスのプレスリリースより)

『林政ニュース』編集部

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