花粉症対策事業の効果データ公表に誤り 「雄花50%以上減少」の事例は限定的

全国 事件・不祥事

花粉症対策事業の効果データ公表に誤り 「雄花50%以上減少」の事例は限定的

林野庁が2002年度から実施している花粉症特別対策事業(5か年事業、各年度の予算額は6,000〜7,000万円 )の実施効果に関するデータの公表に誤りがあったことが判明した。

問題となったのは、同事業の2002・2003度実施分に関する調査データ。同事業では、スギ・ヒノキ人工林の花粉発生量を減らすため雄花の多い木を選んで抜き伐りし、作業実施前後のデータを収集・比較することにしている。

林野庁は、都道府県を通じてまとめた事業成果として、「20~30%の伐採率で雄花が約50%減少」と、ホームページなどで公表していた。だが、2002・2003年度に調査した154か所のうち、伐採率20〜30%の抜き伐り前後を比較したのは88か所であり、このうち50%以上の減少率を示したのは23か所にとどまっていた。

一方、木を伐った割合よりも雄花の減少割合が少なかったケースが37か所あり、このうち7か所では雄花の多い木を除去したにもかかわらず、逆に雄花の量が増えていた。

【解説】首脳陣から陳謝・反省の弁、「けじめ」が問題

林野庁が、花粉対策事業の調査データを一部だけ公表していたことは、結果的に事業効果を過大にみていたことになる。この問題を最初に 報じたのは2月21日付けの読売新聞(夕刊一面)。花粉シーズン直前のタイミングであり、他のマスコミもこれに追随、農林水産省と林野庁に対し、責任を厳しく問う場面が続いた。

林野庁の辻健治次長は、21日夕方に記者会見して、「( 一部のデータだけで)断定的に公表したのは誤りだった」と認め、追跡調査を行う方針を明らかにした。2日後の23日には、石原葵・農林水産事務次官が、「一部の事例を一般化し、深く反省している」と陳謝。翌24日には、中川昭一・農林水産大臣が「国民の期待を裏切ったことは非常に大きい。信頼回復のためにもきちっと対応していきたい」と述べた。

林野庁の説明によると、花粉対策事業は、統計的分析用のデータ収集が目的ではなく、「50%程度」という数値も抜き伐り効果の目標値という意味合いがあった。だが、「国民病」となった花粉症に関するデータの取り扱いが不適切であったのは事実。悪意のあるデータ操作や法律違反があったわけではないものの、国民から見てわかりやすい方法で、何らかの「けじめ」をつける必要がある。

(2006年2月21日・23日取材)

『林政ニュース』編集部

1994年の創刊から早30年! 皆様の手となり足となり、最新の耳寄り情報をお届けしていきます。

この記事は有料記事(1017文字)です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
詳しくは下記会員プランについてをご参照ください。