当初予算はマイナスだが頼みのTPP対策で前年度並みに
前編に続いて、林野庁の「15か月予算」、すなわち今年度(2020年度)第3次補正予算と来年度(2021年度)当初予算の要点を解説する。今回は非公共事業の中から目立つ事項をピックアップしていこう。
非公共事業の来年度当初予算(概算決定額)は1,063億円で、対前年度比では1.1%の減。公共事業とは対照的にマイナス予算となった。だが、今年度第3次補正の212億円を加えた「15か月予算」では1,275億円となり、「前年度とほぼ同規模の予算になった」(林野庁幹部)という。
国土強靱化対策という強力な追い風が吹いている公共事業に比べ、非公共事業は予算額の押し上げ要因が乏しい。その中で所要額をキープできたのは、3次補正の「合板・製材・集成材国際競争力強化・輸出促進対策」に一部公共事業を含めて363億円が計上されたからである。
いわゆるTPP対策として実施されている同対策は、今や非公共事業にとってなくてはならない存在だ。通常ベースでは日の目を見ない事業の受け皿的な役割も果たしている。その対策に前年度並みの予算がついたことで、非公共事業全体の格好がついた。この点を踏まえた上で、個々の事業についてみていこう。
異分野の人材を集め「森ハブ」新設、合法性確認もデジタルで
昨年9月末の概算要求時にアクセントをつけたように、林野予算の新たなキーワードとして浮上しているのが「林業DX」だ。この「デジタルトランスフォーメーション」を推進するために6,800万円で新規要求していた「林業イノベーションハブ構築事業」には3,500万円がつき、スタートが切れることになった。産学官のトップランナーで構成する「林業イノベーションハブセンター」、略称「Mori-Hub(森ハブ)」を設置して、デジタル技術を活用した林業改革の戦略を練るという。担当の研究指導課は、「異分野の専門家から斬新な提言をいただきたい」と期待を込めている。まずは、「森ハブ」の人選に注目したい。
川下分野の「林業DX」ものとして新規要求していた「流通木材の合法性確認システム構築事業」は、TPP対策の中でメニュー化された。スクラップ事業なしの純粋新規として要求していたので予算化は難しいかとも思われたが、3次補正を利用して行えることになった。紙ベースで行われている合法木材の証明や確認作業をデジタル技術を使って合理化・効率化するための調査などに着手することにしている。
都市木造化・CLT関連予算を増額、北米向け輸出を強化
川下関係の中核事業である「木材産業・木造建築活性化対策」は、対前年度比5割増の19億3,100万円を要求していたが、査定の結果、来年度当初予算で認められたのは12億5,100万円。これにTPP対策の約20億円がプラスされ、金額的には概ね納得の水準となった。約20億円でコロナ対策を実施することも想定されているという。
同対策のメインである「都市の木造化促進総合対策事業」の予算額は前年度より3,000万円増の3億3,000万円、また、「CLT・LVL等の建築物への利用環境整備事業」は6,000万円増の7億2,100万円で実施する。政界や財界も注目する都市木造化路線をテコ入れするほか、CLTについては新しいロードマップを作成して取り組みを強化する方針だ。
TPP対策の一環として「木材製品等の輸出支援対策」に8億7,000万円が計上されたことにも留意しておきたい。現在、北米向けのフェンス材輸出が伸びているが、これを一歩進めて2×4住宅向けの構造材輸出につながる取り組みを支援する。現地の規格取得などを視野に入れているようだ。
造林作業者の育成研修を追加、コロナ対策で関係人口拡大
人材育成の「『緑の人づくり』総合支援対策」は、約53億1,400万円の要求に対し、来年度当初で46億5,800万円がつき、3次補正で2億3,500億円が加わった。これも前年度並みの決着となった。
「緑の雇用」事業に2つの拡充事項を加えることも認められ、研修メニューに「造林作業者を育成する研修」を追加する。機械化の遅れで人手不足が深刻な造林作業に関する研修の機会を増やし、一貫作業を担える人材を育てるのが狙いだ。
また、新規就業者を対象にした研修に、「山間部での定着に向けた導入研修」を加える。各地で設立が始まっている「特定地域づくり事業協同組合」が山仕事などを派遣業務として行えることを踏まえ、林業専業にこだわらずに、山村への「定着」を重視した研修を行うことにしている。
森林利用課が58%増で重点要求していた「新たな森林空間利用創出対策」は、残念ながら前年度より3,900万円減の8,200万円で継続するオチになった。ウィズ&アフターコロナ社会への対応として産官学コンソーシアムの立ち上げを目論んでいたが、国の予算に頼らず民間ベースで設置を目指すことになった。
同課が19億円で拡充要求していた「森林・山村多面的機能発揮地域力支援対策」は、前年度と同額の14億円となり、ネーミングに入れていた「地域力」の言葉は外れた。ただし、都市住民など地域外の関係者が加わった林業体験活動なども支援対象に加え、関係人口の拡大を図るという内容の見直しは行われる。
以上のほか、コロナ対策として、生産を伴わない森林施業を支援して雇用の維持を図る「林業経営体能力向上支援事業」に3次補正で5億円が計上されている。
このほかにも花粉対策などの事業がある。改めて取り上げよう。
(2020年12月25日取材)
詠み人知らず
どこの誰かは知らないけれど…聞けないことまで聞いてくる。一体あんたら何者か? いいえ、名乗るほどの者じゃあございません。どうか探さないでおくんなさい。