日南町の「カスケード・プロジェクト」が相次ぎ事業化【需要を創る!】

鳥取県の日南町で国産材の“出口”を広げる新規事業が相次いで始動している。同町では、2016年に「木材総合カスケード利用プロジェクト」(以下「カスケード・プロジェクト」と略)がスタートを切り、未利用材から新製品をつくり、新しいマーケットを創り出すと内外に宣言した。この宣言が具体化してきている。

「DWファイバー」に続き木質培土「グロウアース」を発売

大手建材メーカーの大建工業(株)は、1月18日に一風変わったプレスリリースを出した。内容は、国産材を原料にした木質培地「グロウアース」の販売を開始したというもの。「建築資材の総合企業」を掲げる同社が農業・園芸資材分野に参入するのは初めてであり、意外感を持って受け止めた関係者も少なくない。

国産チップを原料にした培地「グロウアース」

だが、これには前段がある。同社は2017年に、国土防災技術(株)と連携して端材を原料にした土壌改良材「DWファイバー」を発売した。「DWファイバー」は、日南町が進める「カスケード・プロジェクト」の第1号製品であり、その開発において培った木材加工技術が「グロウアース」のベースの1つになっている。

「グロウアース」を使って栽培中の野菜苗

「カスケード・プロジェクト」の第2号製品である「グロウアース」は、国産の木材チップを粉砕処理した後に特殊な加工を行っており、①水はけ・水もちがいい、②親水性が高い、③軽くて扱いやすい――などの特長を持つ。千葉県で行ったガーベラ養液栽培試験では、1年間で収穫量が4割アップする効果が確認された。これから農業資材メーカーなどへの販売を強化していく方針だ。

その一方で同社は、本業である建築資材分野でも「カスケード・プロジェクト」に沿った新規事業に踏み出している。

防腐・防蟻処理LVLを生産、日南大建の新工場が本格稼働へ

昨年(2020年)の11月2日、日南町内で新設工場の「起動式」が開催された。工場を立ち上げたのは、2019年3月に地元企業の(株)オロチと大建工業、日南町森林組合、越井木材工業(株)の4社が設立した合弁会社・日南大建(株)。昨年8月に新工場が竣工し、コロナ禍のため延期していた竣工式も兼ねて「起動式」を行い、鳥取県の平井伸治知事や日南町の中村英明町長も出席した。

同工場では、オロチが製造したスギの単板に防腐・防蟻処理を施し、耐久性やシロアリ防除機能を高めた「高付加価値LVL(単板積層材)」の生産を担うことにしている。現在、AQ認証(優良木質建材等認証)の取得手続きを進めており、4月頃から本格稼働に入る予定だ。

日南大建の福知義久社長は、「高付加価値LVL」の特長について、「単板段階で薬剤を含浸させるので品質の安定性が向上する」と話しており、「土台や大引など、これまでLVLが使われてこなかったところでも利用できる。価格が高騰している米マツ製品に代替できるのではないか」と意欲を口にする。

福知義久・日南大建社長

新工場では、将来的に不燃LVLの生産設備を導入し、「カスケード・プロジェクト」の“メニュー”拡大につなげることも検討している。福知社長は、「石油化学工業のように1つの原料から様々な製品をつくれるようになるといい。日南町は『木材コンビナート』としてのポテンシャルを持っている」と期待を込めている。

(2021年1月18日取材)

(トップ画像=日南大建の製造設備(スギ単板に防腐・防蟻薬剤を含浸させる))

『林政ニュース』編集部

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