茨城県那珂市に日本初の“泊まれる植物園”、県民の森にもアクティビティ施設を整備

茨城県 森林の新たな利用

日本初の“泊まれる体験型植物園”として茨城県那珂市に「THE BOTANICAL RESORT 林音(リンネ)」(以下「林音」と略)が11月29日(土)にオープンする。1981年に開園した茨城県植物園(12.0ha)をリニューアルし、宿泊・温浴施設やレストランなどを併設する。隣接する県民の森(64.7ha)にもアクティビティ施設を整備し、両エリアが一体となって地域振興の拠点となることを目指す。

「林音」の園内マップ(画像提供:「林音」)

「林音」は、コンセプトに「緑に遊び、緑に包まれて眠る、日本初の泊まれる植物園」を掲げ、宿泊・温泉・食・アクティビティをワンストップで楽しめるようにする。これまで有料だった植物園は、リニューアルを機に無料開放する。

建築物には県産木材活用、宿泊や体験など多彩なメニューを提供

「林音」内の建築物には原則として県産木材を使用し、エントランス棟の入口部分には様々な植物によるボタニカルウォールを設置して、来場者を新しい植物園へ誘うようにする。

宿泊施設は木々の間に計45棟を配置し、ハンモック付きテラス等があるグランピング施設27棟、最大7名まで泊まれるタイプや愛犬と泊まれるタイプのコテージ18棟を備え、宿泊料金は1人1泊2食付きで1万9,140円(税込)からとする。

温浴施設には、露天風呂を備えた大浴場や、ハーブを使った薬草湯、水着着用で利用する男女共用サウナ、植物で飾りつけた読書・食事コーナーなどを設置。レストランはガーデンに面する開放的なデザインとして地元食材を中心としたメニューを提供し、ガーデンウェディングなどにも対応する。

園内には、熱帯植物館(バニラドーム)もあり、東南アジアの熱帯・亜熱帯地域に生息する約240種、2万3,000本を展示し、バニラの木に囲まれたカフェでオリジナルのソフトクリームなどをふるまうようにする。夜間にはライトアップも行う。

隣接する県民の森には、最長150mのジップラインやツリーアドベンチャー「TOBIZARU」を設ける(利用料は1名3,850円、税込)。また、デジタル技術を活用して森の中で恐竜を倒ARシューティングゲーム「ジュラシックハンター」も整備する(同1,320円、税込)。

“持続可能な県有施設”へ、6年後には指定管理料ゼロを目指す

開園から40年以上が経過した茨城県植物園は、施設の老朽化が進み、今後も維持するには大規模な修繕工事の必要があった。

植物園の利用者数もピークだった1995年の約23万人8,000人から2022年には約5万6,000人と約8割減少しており、近年は年間の入園料収入が約700万円であるのに対し管理費が約1億円かかる赤字運営となっていた。

茨城県植物園と県民の森の利用者数の推移(茨城県基本計画より)

一方、1968年にオープンした県民の森の利用者数は、平成以降は年間5~9万人で推移していたが、令和に入ってから毎年10万人を超えるようになり、2021年には過去最高の約12万7,000人を記録した。コロナ禍における三密回避のニーズを受けて、森林空間の利用価値が高まってきている。

同県は、こうした状況を踏まえて、植物園を全面的にリニューアルして、“持続可能な県有施設”への転換を図ることにした。デジタル田園都市国家構想交付金も活用して総事業費は約34億円に上る大型プロジェクトとなっている。

植物園の運営は、県内外の企業など8社で構成する(株)ボタラシアンリゾート(茨城県那珂市、武長太郎社長)が指定管理者となって担う。6年後には施設収入だけで運営し、指定管理料をゼロにすることを計画している。

(2025年11月10日取材)

(トップ画像=「林音」内にあるコテージ)

『林政ニュース』編集部

1994年の創刊から31年目に突入! 皆様の手となり足となり、最新の耳寄り情報をお届けしてまいります。

この記事は有料記事(1602文字)です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
詳しくは下記会員プランについてをご参照ください。