ここにきて韓国向けのヒノキ丸太輸出量が急増
浜田港は明治32年に、当時の明治政府から外国貿易の開港指定を受けた古い歴史をもっている。平成13年には韓国釜山との国際定期コンテナ航路が開設され、さらに平成20年にはロシア・ウラジオストク港とのコンテナ貨物輸送が可能な(Roll-ON/Roll-of ship)が就航した。その後、平成22年に重点港湾、翌23年には日本海拠点港に選定され、環日本海時代における国際貿易港としての発展が期待されている。
これまで浜田港からの主要な輸出品目は中古車、冷凍魚介類などだったが、ここにきて国産材の輸出量が増加してきている。
その浜田港を臨む浜田港運の本社で、遠藤教授は、同社の岡本壽人専務取締役、東風上賢専務取締役、荒木重幸常務取締役、そして宮下義重取締役会長と向き合った。
現在、浜田港からはどれくらいの丸太が輸出されているのか。

財務省貿易統計によれば、平成24年の国産材丸太総輸出量は10万6,113m3で、このうち6,700m3(6%)が浜田港から輸出されている。その中で最も多いのは韓国向けで85%を占めている(表参照)。樹種は、大部分がヒノキだ。次いで、ベトナム(12%)が多く、樹種はヒノキ、スギ、コナラ、ケヤキなどとなっている。

韓国向けのサイズは?
長さ2.4m、3m、4m、5m、6mが中心だ。
韓国での用途は何か。
2.4mはマンション用内装材。他のサイズは、直接確認してはいないが、造船用材になると聞いている。
燻蒸処理のコスト負担で中国への輸出量は伸びず
遠藤 浜田港は韓国にも近いが中国にも近い。にもかかわらず中国への輸出実績が少ない。全国レベルで国産材丸太の輸出先をみても、トップは台湾(57%)、次いで韓国(26%)、ベトナム(14%)となっている(平成24年の実績)。国産材の輸出先として中国に大きな期待がかかっているのに、輸出量が伸びないのはなぜか。

中国側が輸出国に対して丸太の燻蒸処理を要求していることが大きい。これに対して韓国は、「規制なく受け入れ国で対応」としており、台湾、ベトナムも「輸出検査後、植物輸出検疫証明書の発給を要求」と燻蒸処理は求めていない。燻蒸作業は、コンテナ単位で薬剤を使って48時間行わなければならず、人件費だけでもかなりかかる。単価の安い国産材丸太を輸出するにはコスト負担が大きすぎる。
また、港の立地条件によって輸送費に違いがあることを忘れてはならない。例えば、台湾に輸出する場合でも、鹿児島県志布志港から出すのと浜田港から出すのとでは、かなりの価格差がある。志布志港の方が圧倒的に有利だ。
とくに、B材、C材といった低質材丸太を輸出する場合、そうした価格差は大きい。どの国にどのような国産材を輸出することがベストなのか、さらにきめ細かく検討していく必要があるう。
直接丸太集荷はせず、商社の輸出業務をサポート
浜田港運は昭和2年に創業し、昭和16年に海運・回送業を始め、昭和45年に通関業免許を取得した。現在、浜田港における国産材輸出では、独特の“立ち位置”をキープしながら事業を行っている。
輸出する国産材丸太は、浜田港運が直接集荷しているのか。
いや、弊社は流通業だ。直接、丸太の集荷業務を行うことはない。5つの商社と取引関係を持っているが、いずれも浜田港に営業所を持っていないので、弊社が丸太の検品(仕訳)、ログリストの作成、船積み書類の作成などを行い、コンテナ船やバルク船への船積み作業を行っている。
弊社が保有しているのは、65トンクローラクレーン2基、大型ホイールローダ10台、パワーショベル7台、フォークリフト7台、スキッドステアローダ3台、小型船舶2隻などだ。浜田港で丸太を受け入れ、仕訳・検品・検疫作業を行った後、コンテナに詰めて保税蔵置場に搬入し、船積みしている。
では、商社はどのようにして丸太を集荷しているのか。
いくつかタイプがある。ある商社は素材生産業や製材業者から丸太を集荷し、国内販売用と海外向けに仕訳けをしてから、後者を浜田港に搬入している。
国産材丸太を扱う上での問題点は何か。
ヒノキの場合、量が集まらないことだ。逆にお尋ねしたい。なぜ、国産材丸太の量的確保は難しいのか。
ヒノキは資源の賦存が地域的に偏っている。県別では、愛媛、岡山、熊本でヒノキ丸太の生産量が多い。スギと違って集荷が難しい面はあるだろう。

しかしそれだけだろうか。弊社なりに商社の丸太集荷業務をみているが、実に大変だ。原木市場や製材工場など1社ごとに電話をかけて丸太を確保している。
国産材丸太供給側の情報共有も含めた横の連携が必要だ。島根県の場合は、4つの流域活性化センター(協議会)が健在で、ビビッドな活動を展開しているから、こうした流域活性化センターとの連携を図りながら丸太を集荷していくのも1つの方法だろう。いずれにしても国産材を出す側の組織化が急務だ。
輸出先を増やしリスク分散、港のインフラ整備を
これから国産材輸出を進めていく上での課題は何か。
当面は、輸出先国の選択肢をできるだけ多くすることだ。現在、浜田港からは韓国向けが多いが、その韓国は昨年秋頃からウォン高で経済が曲がり角にきている。一方、中国も景気減速や通貨高で経済は苦戦している。したがって、できるだけ多くの国に輸出できるよう市場調査をするべきだ。ある国の経済が減速したら別の国へというように選択肢を多くする必要がある。
そのとおりだ。木材の輸出大国であるスカンジナビア諸国をみても、EU諸国、北アフリカ、北米、日本など多くの選択肢をもって、輸出量を調整している。
全国で港湾運送業が行えると指定されているのは94港ある。こうした港であれば国産材輸出は可能だ。輸出用国産材の量的確保のほかにも、国産材の一時保管所の確保や荷役機械の装備など港のインフラ整備、そして人材の育成も焦眉の課題だ。国をあげて取り組んでいくべきだろう。

(2013年8月7日取材)
(トップ画像=浜田港運、画像提供:浜田港運)
遠藤日雄(えんどう・くさお)
NPO法人活木活木(いきいき)森ネットワーク理事長 1949(昭和24)年7月4日、北海道函館市生まれ。 九州大学大学院農学研究科博士課程修了。農学博士(九州大学)。専門は森林政策学。 農林水産省森林総合研究所東北支所・経営研究室長、同森林総合研究所(筑波研究学園都市)経営組織研究室長、(独)森林総合研究所・林業経営/政策研究領域チーム長、鹿児島大学教授を経て現在に至る。 2006年3月から隔週刊『林政ニュース』(日本林業調査会(J-FIC)発行)で「遠藤日雄のルポ&対論」を一度も休まず連載中。 『「第3次ウッドショック」は何をもたらしたのか』(全国林業改良普及協会発行)、『木づかい新時代』(日本林業調査会(J-FIC)発行)など著書多数。