多種多様な“山の恵み”を引き出す「摘み草ブレンドティー」
トレトレの看板商品である「摘み草ブレンドティー」は、自生する山野草を中心とした地元の多種多様な“素材”を用いてつくられる。その種類は約60にも及び、加工方法の違いを含めると80以上のバリエーションに分かれる。
一般に流通している大量生産型のティーバッグ用茶葉は、計量の効率化などを考慮して粉砕されることが多い。このため、一度お茶を淹れるとほとんどの味成分が出てしまう。これに対し、同社の「摘み草ブレンドティー」は、素材そのままの形を残しており、2回、3回淹れても美味しさが失われない特長がある。
加工工程では、素材ごとに陰干しか、天日干しを選び、0.01g単位で計量・ブレンドして、注文に応じて味をつくっていく。
素材を摘む時期は、3月下旬から12月上旬まで。ピークは4月から7月。地形が急峻な同町では、同じ山野草であっても標高差によって摘む時期が異なる。収穫作業は、地元住民とともに行っており、竹内社長は「この草は干して飲める、あの草は炒ると飲める」といった“山の知恵”を共有しながら、お茶づくりに反映させている。
京都老舗料理店で経験を積み独立、「一品料理」のようなお茶づくり
「摘み草ブレンドティー」の主な販売先は、京都の料亭や東京のレストラン、洋菓子店など。感受性が高い人々が購入している。
竹内社長は、約20年間、創業100年を超える京都の老舗料理店で働いた後、2015年にトレトレを創業した。

「例えば、京都の料亭から料理と料理の間に出すお茶で、口に残った味を切るようなものが欲しいという注文が来る。これに応えられる一品料理のようなお茶を目指している」──竹内社長は、お茶づくりの基本についてこう語る。
結果的に多品種を扱う「摘み草ブレンドティー」の生産量や販売価格は一律ではないが、年間に約700万円を売り上げる主力商品に育ってきている。
ヒノキのルームミストなども展開、「欲しいものをつくる」
同社は、「摘み草ブレンドティー」とほぼ同規模で、アメニティ商品の生産・販売も行っている。

メイン商品に位置づけているのがルームミスト「によどヒノキウォーター」だ。仁淀川上流域の天然水を沸かした蒸気をヒノキのチップに当てた後、沢の水で冷却すると抽出される蒸留水が主成分で、消臭・除菌・抗ウイルスの効果がある。蒸留水の製造過程で出る精油も商品化して、オンラインショップなどで販売している。
竹内社長が仁淀川町に移住した理由は「仕事のため」。一呼吸置いて、「自分たちが欲しいものをつくれるところを探し、仁淀川の水の美しさと昔ながらの暮らしが残っているこの地域に決めた」と続けた。工房は、廃校となった保育所や小学校を再利用している。自生する“山の恵み”をそのまま生かす同社からは、さらに新しい商品が誕生していきそうだ。
(2021年12月10日取材)
(トップ画像=山野草など“素材”の形をそのまま活かした「摘み草ブレンドティー」)
『林政ニュース』編集部
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