7.3.3. 運賃の「見える化」で公正な取引を実現する協和木材【健全で持続可能な原木・製品輸送の発展に向けて】

東北地方 福島県 研究 統計・調査

協和木材株式会社は、福島県をはじめとした東北エリアで素材生産から製品販売までを一貫して行い、国産材専門の製材工場と集成材工場を営んでいる 。同社は、東北エリアに3つの工場を有し、年間58万m³の製材・集成材を生産している。この生産量は国内トップクラスの規模であり、原木の受入れと製品の出荷という物流量も比例して大きい。このため同社は、「物流の2024年問題」について早い段階から重要視し、対応を進めてきた。具体的には、(1)効率的な配送計画の共有化と、(2)運送業者らとの取引の明確化と連携強化の2つの取り組みを行っている。

事業者名協和木材株式会社
代表者名佐川広興・代表取締役
所在地福島県東白川群塙町大字西河内字鶴巻田10番地
創業年1953年
業種・アンケート種類製品製造業者(NO.2)
年間原木消費量580,000m3(塙工場、集成材工場、新庄工場の合計)
輸送主体委託
輸送手段大型トラック
ヒアリング対応者佐川広興・代表取締役、佐川和佳子・専務取締役

7.3.3.1.     委託業者と連携して待ち時間をなくし、情報共有のデジタル化も推進

同社の1日あたりの原木受け入れ量は、塙工場と隣接する集成材工場だけでも大型トラック約80台分に達し、製品の出荷量は約30台分に及んでいる。

原木の受け入れは、素材生産業者(直接取引及び立木買いした山林の伐採・搬送の委託)が持ち込む場合と、原木市場などで購入した原木を運送業者に委託する場合がある。特に、原木の受け入れについては、トラックの待ち時間を極力削減するために、スムーズな運送計画が求められる。そこで同社は、関係者間で円滑なコミュニケーションが図れるように、毎回同じ運送業者に委託し、1日に受け入れるトラック数と受け入れ時間を、午前と午後で分けて計画することで、素材生産業者の輸送車や運送業者の輸送車が重複しないよう綿密な配送計画を立てている。

こうした努力により、トラックの待ち時間がない受け入れ体制を創出している。

また、日時、トラックの台数、輸送量(体積)などが記された配送計画を1か月ごとに作成している。以前はファックスを利用して運送会社に共有していたが、最近はアプリケ-ションソフトを用いてデジタル化に対応した配送計画の共有化を進め、より効率的な配送管理を図っている。

一方、製品輸送に関しては、委託している運送会社間で荷積み開始時間を調整する方法をとっている。

7.3.3.2.     運賃の引き上げ要請に対応、独自のマトリックスを活用

同社は、原木市場等で購入した原木の受け入れと製品の出荷にかかる輸送について、基本的に木材を専門に扱う運送業者に委託している。委託先については、工場から比較的近い関東エリアは原木、製品ともに地元周辺の業者、運送途中でのドライバー交代が必要な遠くのエリアへの製品輸送については全国展開を行う大手業者としており、輸送距離に応じて委託先を変えている。

図7-3-3-1 本社工場にて素材生産事業者が土場に丸太を降ろす様子
出典:調査チームが塙町にて撮影(2025年2月)

「物流の2024年問題」に関わって、委託先である運送業者から運賃引き上げの要請が出てきたため、同社は前向きに対応してきた。その際、誰が、どこで、どの程度、木材を運んだのかをはっきりと「見える化」し、公正取引法に基づく価格転嫁が担保できるようにした。

同社は、運賃を計算するマトリックス(表)を作成している。このマトリックスは、運送距離1kmを単位とし、距離料金、積み下ろし料金、舗装路、未舗装路の4つの要素から作成されており、m3あたりの輸送単価が一目でわかるように工夫されている。このマトリックスを素材生産業者らと共有することによって、全ての委託業者との取引において公平性が担保されることを目指している。

同社によると、製材・集成材工場における加工技術の進歩により、コストダウンが進み、外材と十分に勝負できる時代になってきている。今後も同社は、外材よりも国産材を安く生産すると同時に、原料確保、商品搬送に関わる物流の最適化をさらに進め、国産材のシェア拡大に努めていくことにしている。

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(株)日本林業調査会

1954年創業。「林政ニュース」の編集・運営・発行をはじめ、森と木と人にかかわる専門書籍の発刊を行っている。

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