7.1.1.    ネットワークを広げ輸送を効率化する東北地区原木トラック運送協議会

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東北地区原木トラック運送協議会は、国産材サプライチェーン構築において重要な役割を担う原木トラック運送業の社会的・経済的地位の向上と会員相互の連携強化を目的に2017年9月28日に東北地区の原木運送を営む事業体が集まり設立された団体である。国内初の原木運送事業者による協議会として、木材流通の広域化に伴い増大する物流課題に対し、事業者間の連携により解決策を模索している。輸送する原木が国有林から出材されることが多いことから、主な活動として東北森林管理局への要望活動や合同現地検討会の開催、会員企業間の情報共有、視察研修等を実施している。

団体名東北地区原木トラック運送協議会
代表者名松田光治・有限会社三栄興業代表取締役
所在地岩手県盛岡市菜園1丁目3-6(ノースジャパン素材流通協同組合内)
設立年2017年
業種・アンケート種類運送事業業(NO.4)
年間原木運送量約2,500,000m³
輸送主体自社
輸送手段トラック
保有トラック台数
ドライバー人数
ヒアリング対応者松田光治・有限会社三栄興業代表取締役、鈴木信哉・ノースジャパン素材流通協同組合理事長

7.1.1.1.     2017年の設立以来、東北森林管理局と協働して物流の改善に取り組む

東北地区原木トラック運送協議会は、有限会社三栄興業代表取締役の松田光治氏が会長を務め、事務局はノースジャパン素材流通協同組合が担当している。設立当初13者だった会員数は2022年時点で26者に増加し、主に国有林材を輸送する事業者で構成されている。会員企業全体の年間総原木輸送量は約250万m³に上り、これは東北(青森兼、岩手県、宮城県、山形県)からの年間伐出量の約50%に相当する。

同協議会設立の背景には、大規模な木材加工工場や木質バイオマス発電所の整備に伴い、木材流通の広域化が進み、原木運送事業者の役割がますます重要性を増したことがある。個々の事業者では対応が困難な業界全体の課題に対し、事業者間の連携により効果的な解決策を見出すことを目指している。

東北森林管理局との関係は極めて密接であり、会員企業が同局管内から出材される原木の大半を輸送している状況にある。国有林材の安全かつ効率的な輸送の実現に向け、同局への各種要望活動を積極的に行うとともに、合同現地検討会を開催するなど、原木輸送の効率化に共同で取り組んでいる。また、協議会内において、会員同士の意見交換会や視察研修などを継続的に実施している。

7.1.1.2.     ドライバーファーストの視点から様々な制度改善を要望し実現

制度面の見直しに関しては、2020年の林道規程改正において、同協議会も検討会に参加し、ドライバーファーストの視点を盛り込んだ議論を展開した。その結果、「登坂能力に応じた勾配等」から「降坂時の運転手の心境を考慮した勾配等」への変更や、第4条自動車道の種類区分へのセミトレーラーの追加、第12条路肩幅員の下限値を0.25mから0.30mに拡大など、大量の木材や長尺材の輸送に対応可能な林道開設に向けた全面的な改正が実現した。

2021年には、林道整備と原木輸送の効率化を推進する中核人材の育成を目的として、東北森林管理局内に「林道プロジェクトチーム」の設置を要望し、実現した。年1回の合同現地検討会では、森林管理局の職員がトラックに同乗して林道走行を体験するなど、相互理解を深める機会を設けている。

2022年には、東北森林管理局との間で敷鉄板貸出協定を締結した。これによって、崩壊箇所の応急対応が可能になり、原木の品質低下を防ぎながら迅速に運送することができるようになった。同協定に基づく取り組みは、現在は岩手県と秋田県で実施されており、今後は青森県への展開も予定されている。

図7-1-1-1要望活動の様子(写真提供:ノースジャパン素材流通協同組合)
出典:ノースジャパン素材流通協同組合(2024年3月10日)『NJ素流協News第230号』

7.1.1.3.     林道補修材の最適化、林道カーブの拡幅確保などで輸送の安全性を確保

東北地区原木トラック運送協議会の要望により実現した物流の効率化や安全性向上などにつながる主な改善点を列挙すると次のとおりである。

  1. 林道補修材の最適化:小径の砂利や砕石ではなく、径の大きな岩ずりや現場調達の50〜60cm長の残材を活用した林道補修を推進。これにより路面の沈下防止とトラック破損リスクの低減を実現。
  2. 林道カーブの拡幅確保:トラックの内輪差(タイヤ1本分)を考慮した拡幅により、山側路肩の崩壊リスクを低減し安全走行を確保。
  3. 運行障害の除去:支障木の伐採と下草刈りによる視界確保と安全走行の実現。
  4. 情報提供体制の整備:作業現場入口、路肩決壊箇所、通話可能エリアなどの案内掲示板設置。特に、通信圏外が多い山間部での緊急連絡手段確保に貢献。
  5. 待避場所の戦略的配置:林道延長の増加に対応し、車両すれ違い時のバック走行リスク軽減のための待避場所を整備。
  6. 回転場所の確保:土場奥への回転スペース設置により前進走行を可能にし、バック走行に伴う危険性を低減。
  7. フルトレーラー対応中間土場の整備:車両大型化による効率的広域運送の実現に向けた基盤整備。
  8. 作業動線の分離:集材・椪積み作業と運送作業の動線を分離した土場設計により、素材生産業者と運送事業者の作業効率と安全性を向上。
図7-1-1-2集材・椪積み動線と林道を分割化した土場(写真提供:ノースジャパン素材流通協同組合)
出典:東北地区原木トラック運送協議会(2022年1月19日)『令和3年度国有林材の効率的で安全な運送に向けた要望書』

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(株)日本林業調査会

1954年創業。「林政ニュース」の編集・運営・発行をはじめ、森と木と人にかかわる専門書籍の発刊を行っている。

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