機械・部品に関するニーズにあまねく応えるサービスセンターを新設
リタプラスの中核事業は、各種林業機械の販売とアフターケアだ。フィンランドを代表する機械メーカー・KESLA(ケスラ)や、オーストリアで高性能チッパーなどを製造しているMUS‐MAX(ムスマックス)の西日本代理店となっているほか、国産機械や関連部品などをあまねく取り扱っている。取引先は全国に及んでおり、社長の藤川靖治(59歳)は、「大型機械が月に3~4台のペースでコンスタントに出ていく」と話す。
昨年(2024年)9月、同社の新たな事業拠点となるサービスセンターが日田市の山あいに完成した。1万3,000m2の敷地内に機械棟や部品庫、研修棟、事務所などがあり、ストック・出荷点検・架装組付・メンテナンス・アフターサポートまでをワンストップで提供できるようになっている。

機械棟内にはケスラの出荷テストベンチなどがあり、東洋刃物(株)の平面研削盤を導入して目立てのサポートなども行えるようにしている。
部品庫は冷凍コンテナの断熱性能の高さを利用して高温対策を講じており、常に約2,000種類、約1万点を在庫している。

藤川がモットーとしているのは、「お客様の声を各メーカーにフィードバックし、製品のさらなる改良と品質向上を図ること」。このため、各メーカーと月に1~2回はウェブ会議を行って情報・意見交換を重ねている。
「日本の注油環境を変える」運搬容器を輸入・販売し現場を改革
リタプラスは、林業機械類とともに、ある製品の普及にも力を入れている。それは、軽油・灯油の運搬容器。スイスに拠点を置くFMT社の日本代理店として、日本仕様にアレンジした注油機能付き運搬容器を輸入・販売している。

林業現場で使われている重機の燃料(軽油等)は、通常、ポリタンクやドラム缶で運ばれている。運搬中の揺れや振動、注油時の垂れこぼしなどによって土壌が油で汚染され、海や川に流れ出ると水質の悪化を引き起こす。また、ポリタンクやドラム缶は結露が発生しやすく、エンジントラブルの原因にもなる。
同社が提供しているFMT社の運搬容器は、低密度ポリエチレン製で結露しにくくなっており、オートストップ機能によって燃料の吹きこぼれを防げる。自動注油機能やデジタル流量計なども備え、6mホースを標準装備し、暴風雨時でも雨水の侵入を防ぐ深層構造なので、安全で効率的な作業が可能になる。価格は容量960ℓのものが約60万円、430ℓタイプで約40万円などとなっている。

この運搬容器は、国際輸送連合のUN規格を取得し、日本の消防法の基準をクリアし、国土交通省のNETIS(新技術情報提供システム)認定製品にもなっている。
藤川が目指しているのは、「日本の注油環境を変えてヨーロッパ並みにすること」。これが実現できなければ、「林業が環境にいいとは言えない」と言い切る。
年商20億円の達成とともにレストラン「地球の中心」の開店も目指す
リタプラスを率いる藤川は、日田商業高校を卒業し、ロイヤル(株)(現ロイヤルホールディングス(株))に入社して、社会人生活のスタートを切った。外食大手の現場で接客業の基本やセントラルキッチンなど最新ビジネスのノウハウを学んだ後、26歳のときに日田市の林業会社・(株)トライウッドに転職。森林の経営・管理から素材生産、木材の加工・販売までを第一線で担い続け、47歳になって同社を立ち上げた。
それから12年が経過する現在、同社では18名が働いており、年商は約14億円に達する見込みだ。藤川は、「次は年商20億円を目指す」と意欲をみせるとともに、独自の目標を口にした。それは、「『地球の中心』と言うレストランをオープンする」こと。
外食業界に身を置いた経験のある藤川にとって、自前のレストランを持つことは夢の1つかもしれない。ただ、思い描いていることはもっと大きい。藤川の脳裏にあるのは、「天空の城ラピュタ」のストーリー。宮崎駿監督による初の長編アニメから伝わってくるのは、「(人類は)土から離れて生きられない」というメッセージだ。
藤川の持ち味は、ロマンチシズムを伴った戦略的な思考と行動力。それが林業の新たな地平を広げていく─そんな予感が漂っている。
(2024年12月19日取材)
(トップ画像=サービスセンターの全景、画像提供:リタプラス))

『林政ニュース』編集部
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