旧体育館を木造で全面リニューアル、正角材に加え虫害材も活用
山北町が建設を進めている体育館は、老朽化していた旧体育館を全面的にリニューアルするもので、木造平屋建てで建築面積は521.43m2、延床面積は498.33m2。館内には、武道場やダンス・体操室、交流ホールなどができる。
構造材には100%地域材(町産材+県産材)を用い、150mm角の正角材で主要構造部分を構築し、使用木材量(製品ベース)は約100m3に達する。併せて、虫害材(アカネ材)の有効利用などにも取り組んでいる。
「木材調達調整会議」で合意形成進め「単年度」のネック解消
山北町立木造体育館の総建築工事費は約3億円を見込んでおり、町の一般財源だけで賄うには負担が重い。そこで、国(林野庁)が予算化している「林業・木材産業成長産業化促進対策交付金」を利用することにした。同交付金の助成要件は、JAS製材品を使用することや県産木材を50%以上使用することなどで、同町の木造体育館のプランならば問題なくクリアできた。ただ1つ、ネックとなったのが「単年度事業であること」という縛り。使用木材の確保から建物の完成までをわずか1年間(単年度)でやり遂げるのは現実的に無理がある。そこで同町は、構造用の木材を建設工事の前年度に調達する分離発注方式を取り入れることで解決を図った。
神奈川県内の公共物件で分離発注を行うのは初めてのケースであったため、町や県の関係者に加えて、設計の(株)アカイワデザインスタジオ(横浜市、赤岩勝彦・代表取締役)やコンサルタントの(株)モリアゲ(東京都港区、長野麻子・代表取締役)が参画して「木材調達調整会議」を設置。現地視察などを重ねた上で、建設の前年度に1次加工した製材品を山北町森林組合が確保し、翌年度に建設会社に譲り渡して最終製品に仕上げ、施工するという流れを確立した。
「透かし重ね梁」や「壁柱」などを採用、「情報の分断」の解消が不可欠
11月20日、山北町の生涯学習センターに関係者が集まり、木造体育館の建設経緯などを振り返った上で、施工現場に移動して構造見学会を行った。

設計を担当したアカイワデザインスタジオの赤岩社長は、木造体育館の特長として、在来軸組工法をべースにしながら、「透かし重ね梁」や「壁柱」などの独自の技術や工法を取り入れることで、先駆的な木造建築物になっていることを説明。分離発注と木材の事前調達に関しては、関係者間の情報共有がポイントになると指摘した。また、これから地域材の利用を広げていくためには、公共単価表の作成・公表や重層的なサプライチェーンの見直し、設計者・施工者の育成が必要であるとし、「情報の分断」を解消することが不可欠と強調した。

(2024年11月20日取材)
(トップ画像=木造体育館の完成イメージ、画像提供:(株)アカイワデザインスタジオ)

『林政ニュース』編集部
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