【譲与税を追う】福島県いわき市

東北地方 福島県 税制

【譲与税を追う】福島県いわき市

石炭、温泉、フラダンスで活力を蓄え“木”で飛躍!

いわき市は、かつて“石炭のまち”として栄えた。だが、石炭産業の衰退を受け、地場資源の温泉に着目して「常磐ハワイアンセンター」(現在はスパリゾートハワイアンズ)を開業し、日本を代表するフラダンスの聖地となった。そして今、豊富な森林資源と森林環境譲与税を活用して“木のまち”を目指すときを迎えている。

いわき市は「フラシティiwakiいわき」として知られる

同市の人口は31万8.803人。市面積は12万3,226haで、その約72%、8万8,744haが森林だ。所有形態別にみると、約65%が民有林、約35%が国有林で、民有林の約40%がスギ人工林となっている。人口も森林も多い同市には、2022(令和4)年度に1億6,225万7,000円もの譲与税が交付された。

同市は、これだけの財源をどう取り扱っているのか。譲与税の支出推移はのとおりであり、一旦基金に積み立ててから取り崩すかたちで運用している。主な支出目的は、森林経営管理制度の推進と、公共建築物の木造・木質化だ。

同市農林水産部林業振興課の担当者に譲与税活用の方針を尋ねると、「『いわき市豊かな森づくり・木づかい条例』をベースに必要な事業を展開している」との答えが返ってきた。

条例とプランに基づき市産木材を積極利用、担い手対策も推進

2021(令和3)年度に施行した「いわき市豊かな森づくり・木づかい条例」は、市産木材の利用を促進して森林整備を推進することを目的に掲げている。この目的を達成するため、2022(令和4)年度から「いわき市森林・林業・木材産業プラン」を実行に移している。

同プランでは、公共事業における市産木材の率先利用などを重点施策に位置づけており、譲与税を活用して公共建築物木造・木質化専門アドバイザー事業を行っている。

同事業では、県建築設計協同組合(福島市)と連携して、公共建築物を建て替える際に、木造・木質化に要する費用などを試算して鉄骨造などと比較できるようにした。担当者は、「木造・木質化にまつわる様々な疑問点を解消し、ハードルを下げることができた」と言う。その代表例となっているのが、4月2日にオープンした木造2階建ての「いわき市立内郷保育所・いわき市内郷子育て支援センター」だ。

同市は、担い手育成対策にも譲与税を活用している。昨年度(2023(令和5)年度)から林業アカデミーふくしま(郡山市)の研修生を対象に受講料や住居費などを助成(定額100万円)しているほか、林業経営体向けに林業機械やICT林業関連機器の導入補助(事業費の2分の1、上限あり)も行っている。女性活躍を後押しすべくトイレカーも補助メニューに加えた(同、上限200万円)。

今後に向けて担当者は、「市産木材を積極的に活用しながら、森林経営管理制度による集約化を加速させていきたい」と話しており、進路に迷いはみられない。

(2024年5月30日取材)

(トップ画像=いわき市立内郷保育所・いわき市内郷子育て支援センターの延床面積は1323.99m2、総事業費は約7億4,000万円)

『林政ニュース』編集部

1994年の創刊から早30年! 皆様の手となり足となり、最新の耳寄り情報をお届けしていきます。

この記事は有料記事(1397文字)です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
詳しくは下記会員プランについてをご参照ください。