国内の人工林が主伐期に入ってきている中で、伐採跡地への植林、すなわち「再造林」の遅れが宿痾とも言える重い課題になっている。最新版の『令和7年度 森林・林業白書』によると、「近年の主伐面積に対する人工造林面積の割合は5~6割程度」にとどまっており、“伐りっぱなし”の主伐施業地が半分近くもある。また、「現在主伐が行われているのは条件の良い森林であることが多いと考えられる」ことを勘案すると、これから再造林率を引き上げていくのは至難の業とも言える。この状況に突破口を開くことはできないか──こう思案を重ねた遠藤日雄・元鹿児島大学教授は、宮崎県串間市の南那珂森林組合(井上文利・代表理事組合長)を訪ねることにした。全国屈指の優良林業事業体として知られる同森林組合は、かねてから主伐・再造林の推進に力を入れている。また、同森林組合が事務局をつとめる木材輸出戦略協議会は、丸太(原木)輸出を行っている商社から拠出される助成金を再造林費用に充てる新たな取り組みをスタートさせた。再造林率アップに向けて全国でもトップランナーの立ち位置にある同森林組合は、今、何を考え、どのような“次の一手”を打とうとしているのか──キーパーソンが発する“生の声”を通じて将来ビジョンが明らかになっていく。
国境を超えて丸太を取り扱う商社が再造林の支援に乗り出す
南那珂森林組合の事務所に到着した遠藤氏を出迎えたのは、井上文利・代表理事組合長と清水賢次・日南事業所事業部長兼支所長及び河野壽也・日南事業所第2事業課長兼木材流通促進室長の3名。同森林組合の屋台骨を支えているキーパーソンに、遠藤氏は率直に問いかけた。
最近の話題でとくに興味深かったのは、丸太輸出を行っている商社が木材輸出戦略協議会に再造林助成金を拠出し、同協議会から表彰されたことだ*1。国内の製材企業や合板メーカー、木材市場などが再造林支援の協力金を出す事例は各地でみられるが、国境を超えて丸太を売買している商社が再造林の費用負担に乗り出したのは前例がないだろう。いつからこのような取り組みが始まったのか。
一昨年(2024年)の4月に、木材輸出戦略協議会を構成している都城・曽於地区・曽於市・南那珂の4森林組合の総意として、取引先の商社に再造林への支援を依頼した。
循環型林業を実践する上での最大の課題は、主伐(皆伐)後に再造林へつなげることだ。これまでも行政からの支援や森林組合・林業事業体による企業努力を重ねてきているが、どうしても森林所有者の負担金が発生してしまう。その一部を助成していただけないかというお願いをした。

その呼びかけに商社側が応じたわけか。
趣旨に賛同していただき、一昨年の7月から助成金を拠出していただけるようになった。
輸出丸太1m3当たり100円を拠出し、森林所有者の負担を軽減
助成金の集め方や配分の仕方はどうなっているのか。
輸出した丸太について、1m3当たり100円を再造林助成金として拠出していただいている。
一方で、木材輸出戦略協議会の4組合は、それぞれの素材生産現場から輸出用丸太を何m3出したかを集計しているので、それを積み上げて按分し、森林所有者へ還元するようにしている。

これまでの実績はどうなっているのか。
この仕組みがスタートした2024年度は、実質的に7月から翌年3月までの9か月間で合計約265万円の拠出金が寄せられ、約157haの再造林につなげることができた。ha当たりでは約1万6,800円の支援をいただいたことになる。
翌25年度は、丸1年間で合計約670万円の拠出金があり、再造林面積は約178ha、ha当たりでは約3万7,500円という実績になっている。
助成金の仕組みが始まってから2年弱で300haを超える再造林につながったわけか。滑り出しは順調と言えるのではないか。
この仕組みが本格的に動き出したことを踏まえ、6月12日に開催した木材輸出戦略協議会の総会で、助成金を拠出していただいた4社に感謝状を贈呈した。
各社とも循環型林業の重要性などに理解を示しており、再造林に支援をいただく話は驚くほどスムーズに進んだ。私共としても、輸出商社が日本の森林づくりに協力していることをもっと多くの人に知ってもらいたいと考えている。
行き場のない大径丸太の販路を求めて輸出に挑み活路を拓く
輸出商社と連携した再造林助成金の仕組みが軌道に乗ってきた要因として、南那珂森林組合がこれまで行ってきた丸太輸出の実績があるのではないか。そもそも海外に丸太を出荷する取り組みは、いつ頃から始まったのか。
丸太の輸出事業に着手したのは、2008年頃のことだ。近隣の製材企業が相次いで大型化し、いわゆるツインソーの工場が増えて、製材する丸太の主流が中径木となった。そうなると、ツインソーのラインに入らない径36cm以上の大径丸太が売れなくなった。

当時、当組合の裏の土場には行き場のない大径丸太が約1,000m3も積み上がっていた。新たな販売先をどこに求めるか、日々悩んでいたところに、ある商社から「韓国に出荷してはどうか」というオファーがあり、トライアル輸出として鹿児島県志布志市の志布志港から約1,000m3を韓国に送り出した。
それがきっかけで海外の販路が拓けたのか。
トライアル輸出で、定期的に出荷できそうだという手応えを得た。ただ、まとまった量を当森林組合だけで輸出し続けるのは難しい。そこで近隣の森林組合にも声をかけて、木材輸出戦略協議会を立ち上げ、2015年度から4森林組合体制で取り組んでいる。
年間約5,000m3からスタートし、ピーク時は約7万5,000m3に
木材輸出戦略協議会のこれまでの実績を教えて欲しい。
2011年度から昨年度(2025年度)までの取扱量はトップ画像のように推移している。
韓国向けが中心だった当初は、協議会全体で年間約5,000m3ほどの輸出量だった。それが2013年度に大きく変わった。
何が起きたのか。
中国向けの丸太輸出が始まった。それまでの大径丸太に加えて、中小径の曲がり材などへの引き合いが強まり、数量が一気に増えた。
中国向けが始まると年間輸出量が2万m3を超え、その後も伸び続けて、ピーク時の2022年度には約7万5,000m3に達した。
その後は、6万m3台で推移しており、昨年度の実績は約6万5,000m3となっている。
ピーク時から輸出量が減ったのはなぜか。
南九州では、木質バイオマス発電所向けの燃料材需要が増大しており、輸出用丸太と競合するようになってきたからだ。私共にとっては、売り先の選択肢が広がってきている。(後編につづく)
(2026年6月15日取材)
(トップ画像=木材輸出戦略協議会の取り扱い実績推移)
遠藤日雄(えんどう・くさお)
NPO法人活木活木(いきいき)森ネットワーク理事長 1949(昭和24)年7月4日、北海道函館市生まれ。 九州大学大学院農学研究科博士課程修了。農学博士(九州大学)。専門は森林政策学。 農林水産省森林総合研究所東北支所・経営研究室長、同森林総合研究所(筑波研究学園都市)経営組織研究室長、(独)森林総合研究所・林業経営/政策研究領域チーム長、鹿児島大学教授を経て現在に至る。 2006年3月から隔週刊『林政ニュース』(日本林業調査会(J-FIC)発行)で「遠藤日雄のルポ&対論」を一度も休まず連載中。 『「第3次ウッドショック」は何をもたらしたのか』(全国林業改良普及協会発行)、『木づかい新時代』(日本林業調査会(J-FIC)発行)など著書多数。