「自立化」迫られるバイオマス発電、2022年度から地域要件を追加【緑風対談】

全国 木質バイオマス

FIT(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)がスタートして10年が経過し、バイオマス発電事業が日本林業の行方を左右する存在になってきました。その現状と課題を「緑」と「風」がわかりやすく解説します。

2021年度と2022年度の調達価格は据え置きだが…

農林水産物の生産量はおしなべて右肩下がりとなっているが、例外的に上昇基調を維持している品目がある。国産材だ。直近の木材自給率は37.8%と9年連続の上昇を記録した(2019年時点)。その最大のプラス要因となっているのがバイオマス発電用の燃料材。2012年にFIT(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)が導入され、バイオマス発電事業が「いい商売になる」と見込んで参入する事業者が急増、これに伴って燃料材の需要も増え続けている。

そのFITに関して、経済産業省の調達価格等算定委員会は1月22日の会合で、来年度(2021年度)と再来年度(2022年度)の調達価格(電気の買取価格)の案を示した。案とはいっても実質的に決まりであり、3月末までに正式決定される。その中身に触れながら、日本林業全体に大きな影響を及ぼし始めているバイオマス発電の現状と課題をみていこう。

調達価格等算定委員会が示した来年度と再来年度の調達価格は前頁ののとおり。今年度(2020年度)と同一の据え置き価格であり、これ自体に特段のニュース性はない。だが、バイオマス発電を含めた再生可能エネルギー事業については、FITに頼らない「自立化」が求められており、この据え置き価格には留意事項が含まれている。

1万kW未満のバイオマス発電についてもFIT認定にハードル

留意事項とは、2022年度から「地域活用要件」が導入されること。対象となるのは、1万kW未満の木質バイオマス発電事業で、FITの認定を受ける際に「地域活用要件」を満たすことが必要になる。
すでに2018年度から1万kW以上のバイオマス発電には入札制度が取り入れられている。これに加えて、1万kW未満の発電事業についても、一定のハードルをクリアしなければFITの優遇措置を利用できなくなるわけだ。

「地域活用要件」の内容について、現時点では上ののような事項が示されている。発電プラントでつくられる電気や熱を災害時に活用できるよう防災計画に位置づけることなどが認定の条件になる。2022年度に向けてさらに検討を進めていくことにしているが、認定時に二酸化炭素(CO2)排出量を考慮することなども議論されているという。
いずれにしてもFITがスタートしてからもう10年がたった。調達価格の原資は一般消費者の電気料金=国民負担であり、いつまでも優遇措置を続けるわけにはいかない。抜本見直しの時期に来ていることを、改めて頭に入れておかなければならない。

“稼働予備軍”が動き出すと燃料材が165万m3も必要になる

ここでFITと木質バイオマス発電事業に関する全体状況をみておく。
昨年(2019年)3月時点でFITの認定を受けた木質バイオマス発電所は382か所に達している。だが、稼働しているのは180か所。つまり、約200の発電所が“稼働予備軍”として控えているわけ。かりに計画どおりに稼働すると、燃料材(国産材)の需要量は2025年までに約165万m3も増えると試算されている。

別の側面もみておこう。政府は、エネルギーミックスと呼ばれるエネルギーの長期需給見通しを策定している。木質バイオマス発電は、すでに認定量ベースでは目標値をクリアしており、これ以上FIT発電所を増やす必要はないという見方もできる

FITの後押しを受けて木質バイオマス発電事業が進展したことによる「正の側面」もみておくべきだろう。
林野庁がまとめた資料によると、災害対策の一環として被害木を発電燃料として利用する取り組みが進んでいる。被害木の引き受け価格(買取価格)を一般廃棄物相当の17円/kWhから一般木材の24円/kWhに引き上げたことが奏功しているようだ。
また、新型コロナウイルスの感染拡大で製材・合板工場が減産し、木材輸出がストップして原木(丸太)の行き場がなくなったときには、バイオマス発電所が受け入れ先として機能した。

東北・九州では燃料材向けが100万m3増、持続性が課題

ただ、燃料材需要が急速に拡大していることの余波は大きい。東北や九州では2015年から2019年の4年間で燃料材向けの素材(丸太)生産量が100万m3以上増加しており、その裏返しとして製材用材やパルプ・チップ用材のシェアがダウンしている。

このような状況を踏まえて、農林水産省と経済産業省が設置した「林業・木質バイオマス発電の成長産業化に向けた研究会」は、昨年10月にまとめた報告書で、早生樹等を活用した「エネルギーの森」の造成や熱利用の推進などを提言した。ポイントは、既存の木材利用とバッティングせずに、持続的な燃料材の調達ルートを確立することにある。言うは易く行うは難しとはまさにこのことだが、乗り越えなければならない課題だ。

(2021年2月1日取材)

詠み人知らず

どこの誰かは知らないけれど…聞けないことまで聞いてくる。一体あんたら何者か? いいえ、名乗るほどの者じゃあございません。どうか探さないでおくんなさい。

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