林野庁は、森林の水源涵養機能を評価する新たな手法を導入し、普及を進める。異常気象に伴う集中豪雨の頻発に加え、生物多様性保全への関心の高まりなどから森林の有する水源涵養機能を簡易かつ定量的に評価する手法に対するニーズが強まっている。こうした状況を踏まえ、林野庁が2023年度に設置した有識者委員会(委員長=五味高志・名古屋大学教授)が検討成果をとりまとめる段階に入っており、11月に新たな手法をお披露目するセミナーを開催した後、今年度(2025年度)末までに内閣官房の有識者会議に報告し、幅広い利用を呼びかけていく。
「使える水」の量(水資源涵養量)を簡易に算出、幅広い利用を促す
新たな手法では、降雨量から直接流出量と蒸発散量を差し引いて、「使える水」の量である水資源涵養量(地中への浸透量)を算出する(次式参照)。
(水資源涵養量)=(降雨量)-(直接流出量)-(蒸発散量)
新たな手法の普及を促すため、地域の降水量など入力すれば自動的に水資源涵養量などを計算できる簡易フォーマット(エクセルシート)も公開する。
新たな手法の主たるユーザーとして想定しているのは、森林づくり活動を行っている企業や自治体など。企業は、国際的な枠組みであるTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)のレポートや環境報告書などに新たな手法による算定結果を反映できる。自治体は、森林環境譲与税等を使った森林整備の効果を地域住民にわかりやすく説明する際の新たなツールとして活用できる。
(2025年9月16日取材)
(トップ画像=直接流出量を算出する簡易フォーマットのイメージ)
『林政ニュース』編集部
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