「奈良県フォレスター制度」がネットワークを広げる【人を活かす!】

奈良県 採用 研修

森林づくりを主導できる人材を県が直接雇用し、2年間の研修を経て市町村に長期派遣する──全国でも例のない仕組みをつくっている「奈良県フォレスター制度」がスタートから5年を経過し、着実な成果を出してきている。

未経験者歓迎で6期生募集中、2年の研修を経て市町村に定着

現在、奈良県は、来年度(2026年度)に森林管理職として採用する第6期「奈良県フォレスター」の募集を行っている。募集要項には、①学歴不問・業種・職種未経験歓迎、②月給20万円以上+各種手当+賞与年2回、③1985年4月2日から2008年4月1日までに生まれた人、⑤応募期間は9月2日(火)まで──などとある。

採用後は、「奈良県フォレスターアカデミー」で2年間研修し、市町村に派遣される。市町村での主な業務は、伐採届の受理・指導、放置林の整備企画・進行、森林整備計画の策定・変更、森林GISデータベースの作成・更新などだ。

2021年度に採用された第1期生の1人で、黒滝村で働いている国本峻さんは、素材生産業からの転職者だ。「給与等は一時的に下がったが、今は前職を超えている。研修期間中も待遇が保証されているので安心して学びに集中できた」と話す。

黒滝村に腰を据えて3年目に入り、日常業務を回しながら新規事業を仕込むようにもなってきた。とくに力を入れているのは、地域森林ビジョンの策定。「同期や県職員などとのネットワークがあり、困ったことがあればすぐ聞けるのは心強い」と口にする。

紀伊半島大水害を教訓に森林整備体制を強化、“連携の輪”の拡張へ

「奈良県フォレスター制度」創設のきっかけは、2011年の紀伊半島大水害。県南部で土砂災害が多発し、適切な森林管理の重要性が再認識された。様々な検討を重ねる中で、当時の荒井正吾・奈良県知事と村尾行一・愛媛大学客員教授が意気投合し、制度設計がスタート。2015年に友好提携協定を締結したスイス・ベルン州の森林管理政策やリース林業教育センターの取り組みを参考にして具体的な中身を固めていった。

同制度では、県と市町村が基本協定を締結し、地方自治法に基づいて県職員を市町村に派遣する。派遣された職員(奈良県フォレスター)は、県と市町村の身分を併せ持ち、市町村役場に常駐しつつも必要なときは県庁に出向く。給料・手当は県から毎月支給され、市町村は森林環境譲与税などを活用しながら年度末に必要経費を一括で県に支払う。

業務は、基本的に市町村職員として行うが、伐採届に関しては県職員として処理している。これは伐採届の業務を市町村から県へ権限移譲しているからだ。その背景には、開発目的の伐採や違法伐採について、県が林地開発許可と併せて対応する体制を整えたことがある。

「奈良県フォレスター」として活躍している15名

同制度の創設に奔走し、フォレスターの活動を支援する県森林技術センターの吉村正樹・森林管理市町村連携課森林管理係長は、「将来は、奈良県フォレスターと森林組合・林業会社に就職したアカデミー卒業生などが連携して森林づくり・地域づくりを発展させて欲しい」と期待を込めている

(2025年5月26日取材)

(トップ画像=「奈良県フォレスター制度」の概要)

『林政ニュース』編集部

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