一般公共事業は72億円減、「5か年加速化対策」に息切れも
年末に向けた予算編成作業の仕上がりを左右する今年度(2022年度)補正予算(案)が11月4日に閣議決定された。
林野関係の補正追加額は約1,162億円。比較対象となる前年度(2021年度)補正予算の約1,242億円(第666号参照)には届かなかったが、ほぼ同規模の予算額は確保した。可もなく不可もなしといったところだ。
林野補正予算のうち約8割にあたる約935億円は公共事業に計上されている。ここから災害復旧等事業を除いたいわゆる一般公共事業の予算額は695億円。前年度補正の一般公共事業は767億円だったので、72億円目減りした。
しかも後述するように、695億円のうち森林整備事業から275億円が非公共事業の目玉予算に回される。つまり、今年度補正の一般公共事業は実質420億円ということになる。
その420億円は、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」として措置された。前年度補正では「5か年加速化対策」として492億円が計上されていた。つまり、72億円の目減り分は、そのまま「5か年加速化対策」の配分額が減ったということ。「5か年加速化対策」も3年目に入っており、前倒しで予算を執行してきているので、少々息切れしてきたようだ。
林野公共予算については、今年度補正と来年度当初予算を合わせて2,600億円をクリアすることが大目標となっている。72億円も減って大丈夫かという懸念も出るが、前年度は補正+当初で2,700億円に達していた。今年度補正で72億円減っても来年度当初予算で大幅な落ち込みがなければ、「最終的に2,620~2,630億円を確保できるのではないか」(林野庁担当官)という見通しとなっている。
金目(かねめ)の話ばかりになってしまったが、今年度補正の一般公共事業には、来年度当初予算の要求内容を一部先取りする拡充事項がある。それは、路網の強靭化対策。被災森林作業道の改良・復旧に関する要件を緩和し、間伐等の森林施業を伴わなくても、単体で改良・復旧を行えるようにする。
TPP+食料安全保障対策に499億円、支援内容を拡充
次は、林野補正予算の非公共事業について要点をみよう。最大のテーマは、従来から実施しているTPP等総合対策に食料安全保障対策も加えて新たな対策を講じることだった。その答えとして打ち出したのが「国内森林資源活用・木材産業国際競争力強化対策」。同対策費として非公共事業に約244億円を計上し、前述した森林整備事業(公共)から回す275億円を加えて、予算額を499億円に膨らませた。
前年度補正では、TPP等総合対策として「木材産業国際競争力・製品供給力強化緊急対策」に495億円を計上し、木材加工・流通施設の整備だけでなく、高性能林業機械の導入や路網整備、苗木生産、木材製品の輸出や消費喚起策などを幅広く支援できるメニューを揃えた。
これをベースにバージョンアップしたのが今年度林野補正の目玉である同対策だ。名称を変更して「国内森林活用」の文言を冒頭に掲げ、予算額も4億円増やした。食料安全保障対策の観点からも、外材から国産材へのチェンジが急務であることを踏まえた見直しといえる。
リニューアルした同対策では、建築用木材転換対策に力を入れる方針だ。木材製品流通業者を対象にした講習会の実施や、国産材製品を普及するためのツールの作成に取り組むほか、住宅の主要構造部材等に国産材製品を用いる設計・施工業者らを支援して、外材製品からの切り替えを促すことにしている。
高騰している燃油や資材を森林由来の資源へ転換する対策にも着手する。海外に依存した燃油から国内で賄えるバイオマスエネルギーへのシフトを進めるため、木質バイオマスの収集・運搬や、木質燃料の製造・熱利用などに関する取り組みを支援する。
また、きのこ生産者を対象にして、原木や種駒、種菌、おが粉など生産資材の導入費を軽減する対策も講じる。補助率は資材費高騰分の2分の1相当(定額)を基本とし、燃油高騰の影響に応じて7割相当まで嵩上げすることにしている。
林業従事者確保対策に3億円、外国人材受け入れへ条件整備
今年度林野補正の非公共事業では、「林業従事者等確保緊急支援対策」にも約3億円を計上した。同対策で注目されるのは、外国人材を受け入れるための条件整備を進めることだ。
海外からやって来る技能実習生の在留期間をできるだけ長期化できるように、林業・木材産業を技能実習2号に追加することを目指すとともに、特定技能制度への追加も視野に入れて、必要な取り組みを支援する。具体的には、国内外のニーズ調査や受け入れマニュアルづくり、評価試験の作成、協議会の設置・運営などを進めることにしている。
同対策では、来年度当初予算で要求している2つの事項を前倒しで実施することも予定している。
1つは、地域間・産業間の労働力のマッチング支援。働きたい側と雇用したい側のミスマッチをなくして離職を防ぐため、事前のニーズ調査などに必要な経費について助成する。
もう1つは、多能工化研修への支援。造林と伐採や、伐木・造材・集材など複数の作業をこなせるような技術を学ぶキャリアアップ研修を行う場合に、人件費等を補助する。
以上のほか、従来から行っている就業ガイダンスや、最大3か月のトライアル雇用(短期研修)への支援、労働安全確保対策なども継続することにしている。
(2022年11月4日取材)
詠み人知らず
どこの誰かは知らないけれど…聞けないことまで聞いてくる。一体あんたら何者か? いいえ、名乗るほどの者じゃあございません。どうか探さないでおくんなさい。