ha当たり約250m3の収穫が可能、来年度は4か所に10万本植林
ハコヤナギなどのポプラは、FAO(国連食糧農業機関)の推奨樹種であり、日本には戦後ヨーロッパから導入され、北海道を中心に全国で約250万本が植林されてきた。ハコヤナギの最大の特長は、生長の早さだ。植林後3か月で人の背丈に届き、2年目には人の3倍の高さになる。萌芽更新するため一度植えれば継続的な生産・収穫ができる。
実証事業では、ハコヤナギ(品種名「もりのみらい17号」)をha当たり数千本から約1万本の密度で植林して生長経過を観察し、5年を目処に萌芽更新・伐採試験を実施予定。ha当たり約200m3以上の生長量を見込み、萌芽更新は6回程度を想定する。
植林地は、宮崎県川南町、山口県宇部市、岡山県美咲町、北海道本別町の4か所。今年度(2022年度)は試験的に4か所合わせて計0.6haに約4,000本を植え、来年度(2023年度)は植林面積10haを目標に、さらなる実証事業を進めていく方針。5月11日には川南町と協定を結び、ハコヤナギの植林も含めて、連携・協力体制を築き地域活性化に取り組むことでも合意した。
地目変更せず「農地」にも植林、肥培など徹底した管理が必要
ハコヤナギの植林地は、傾斜の緩やかな耕作放棄地などを予定しており、育林(栽培)→伐採(収穫)した後は、木質バイオマス用資源として供給することにしている。
この過程でポイントになるのは、育林だ。ハコヤナギを育てる際には、早生樹のセンダンなどと同様に施肥が重要になる。耕作放棄地は平坦なので施肥がしやすい。
とくに、4か所ある植林地のうち2か所は地目を「農地」のままにして行う。実証事業を担当している大年正俊氏は、「カテゴリーとしては『農業』を行うといえる」と話す。
通常、ハコヤナギなどの早生樹を耕作放棄地などに植林する際は、地目を農地から林地へ変更する。農林水産省も「最適土地利用対策」の助成内容を拡充し、林地への転用を後押ししている。ただ、地目変更は地元関係者からの理解を得るまでに手間も労力もかかる。
そこで、農林水産省や市町と協議を重ね、2か所では地目変更することなく実証事業を進めることにした。
ハコヤナギを育てていくためには、施肥のほかに、除草や獣害対策、病虫害予防なども行わなければならない。肥培管理も徹底する必要があり、順調に育てていくには手間がかかる。大年氏とともに実証事業を担う根岸秀一氏は、「植林してからどのように管理するかが鍵になる」と口にする。

双日は、4月1日付けで組織改編を行い、早生樹の育成やカーボンクレジットなど新規ビジネスの創出を目指す循環事業開発課を設置した。大年・根岸両氏は、同実証事業において主導的な役割を担っている。「ハコヤナギを新たな地域資源にすることを目指し、地域の第1次産業などとの連携や域内のバイオマス利活用を後押しする事業に育てていきたい」と意欲をみせた。
(2022年6月10日取材)
(トップ画像=本郷植林研究所が2018年に宮崎県都農町で植林したハコヤナギ)
『林政ニュース』編集部
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