7~8階建て「オール木造マンション」実現へ技術開発を加速する長谷工【突撃レポート】

マンション建設大手の(株)長谷工コーポレーション(東京都港区、熊野聡・代表取締役社長)は、7~8階建て「オール木造マンション」の実現に向けて独自の技術開発を加速している。同社は、M&A(企業の合併・買収)を積極的に行って中大規模木造・戸建住宅分野における事業基盤を拡充してきており、昨年(2025年)10月には国(農林水産省)との間で建築物木材利用促進協定を締結して*1、“木”への接近度を高めている。

積極的なM&Aを重ね、マンション事業と戸建事業のシナジーを発揮

長谷工コーポレーションは、2020年に(株)細田工務店(東京都杉並区)及び関連会社を傘下に収めて、2021年に(株)長谷工ホーム(同)を設立した。続いて、昨年7月には東海地方で国産材住宅の建設・販売や森林整備などを行っている(株)ウッドフレンズ(愛知県名古屋市)とグループ会社をTOB(株式公開買い付け)によって完全子会社化した*2

さらに、今年(2026年)の4月1日付けで中大規模木造・戸建住宅分譲事業を再編して、中間持株会社・(株)長谷工ホームホールディングス(杉並区)を設立する(2月27日に発表)。新会社が全体を束ねる体制にして、各社の連携強化とノウハウの共有を促進する狙いがある。

長谷工グループの中大規模木造・戸建住宅事業の新体制(画像提供:長谷工コーポレーション)

同社の技術推進部門で常務執行役員をつとめる若林徹氏は、「マンション事業と戸建事業のシナジー(相乗効果)が生まれつつある」と言う。例えば、細田工務店との間では、“マンション基準”の遮音性を有する木造軸組工法用高遮音床構造や、耐震性・強度を持つハイブリッドキューブ工法などの共同開発を進めている。

若林氏は、「マンションや戸建てにこだわらず、“住まい”というカテゴリーで新しい技術を開発し共有していく」との方針を示している。

「HSウッド」などで「内製化」を促進、トレーサビリティも確保

長谷工コーポレーションは、木造・木質化を推進するため、部材生産の「内製化」にも取り組んでいる。

そのシンボルと言えるのが独自に開発した木質建材「HSウッド(長谷工サステナブルウッド)」だ。「HSウッド」は、スギ丸太を切削した木片(ストランド)の長さ方向を揃えて積層したエンジニアウッドで、利用が難しい丸太でも有効利用できる。

「HSウッド」の生産工場は奈良県五條市で建設工事が進んでおり*3、来年(2027年)2月に竣工した後、設備ラインの整備等を経て2028年4月から本格稼働する予定だ。年間の生産量は1万5,000m3を見込んでいる。

また、グループ会社の(株)フォレストノート(愛知県名古屋市)が手がける集成材をマンションの構造材や内装材に採用する計画も進んでいる。

前出の若林氏は、「内製化」のメリットとして、「コストダウンとユーザーニーズへの対応力の向上」とあげ、「トレーサビリティを確保するためにも生産地が明確な国産材の利用を進めていきたい」と話している。

若林徹・長谷工コーポレーション技術推進部門常務執行役員

「木造推進委員会」発足から5年、流通材も使い汎用性高める

長谷工コーポレーションは、2020年に「木造推進委員会」を設置し、木造・木質化技術の開発に本格的に着手した。これを昨年4月には「環境推進委員会」に改組し、太陽光発電等も含めた環境配慮技術全般を手がけるようにしている。

その上で、当面の目標として掲げているのが、7〜8階建て「オール木造マンション」の実現だ。建設にあたっては、日本建設業連合会(東京都中央区)の会員会社が共同開発し大臣認定を取得した「P & UA構法」を採用する。同構法は、すでに10階建て共同住宅(2022年)や11階建て事務所(2024年)のモデルプランとして日本建築センター(東京都千代田区)の構造評定を取得している。

同社としては、当面はRC造(鉄筋コンクリート造)とのハイブリッド構造で進めながら、「オール木造」に向けた要素技術を蓄えていく計画だ。開発後に広く普及していくため、一般流通材や在来工法の採用も視野に入れている。「いわゆる大工さんでもできる工法にして、一般流通材を活用できればコストバランスがよくなる」(若林氏)と見込んでいる。

段階的に技術レベルを高め、自社物件で健康効果などデータ化

長谷工コーポレーションは、2021年に開設した複合施設「ブランシエール王子」(東京都北区)の共用棟で木材を用いたのを皮切りに、2023年に竣工した7階建てマンション「ブランシエスタ浦安」(千葉県浦安市)で最上階を木造化し、昨年完成した「ブランシエスタ目黒中央町」(東京都目黒区)では7階建てマンションの1~3階をRC造、4~7階を木造とするハイブリッド構造を採用するなど段階的に技術レベルを引き上げてきている。

また、築30年超えの社宅をリノベーションして、一部住戸の内装を木質化した「サステナブランシェ本行徳」(千葉県市川市、2023年竣工)では、居住者の脳波・心拍数・睡眠の質などのデータを継続的に取得しており、健康面への効果などを検証している。

都市部の大型マンションなどを木造・木質化するとコストアップになるとみられがちだが、若林氏は、「建て方や大量生産・大量供給などの工夫で十分カバーできる。エンドユーザーの意識は高い。木造・木質化の取り組みは確実に評価していただける」と自信をみせている。

(2025年 12月3日取材)

(トップ画像=「サステナブランシェ本行徳」の外観、画像提供:長谷工コーポレーション)

『林政ニュース』編集部

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