昨年のお盆過ぎから物件動く、地方の木造住宅に強いニーズ
四季工房の野崎社長は、1982年に同社を設立し、国産材と自然エネルギーを活用した家づくりで顕著な実績を上げている。また、風土社の山下社長は、季刊『チルチンびと』の編集・発行を手がけながら地域工務店のネットワーク化に取り組んでいる。
昨年12月には、四季工房が主宰するエアパスグループの12社と、風土社が組織化している「チルチンびと」地域主義工務店の会の39社が「国産材を活用し日本の森林を守る運動推進協議会」の「共に行動する企業」に認定され、国産材業界との連携を一段と深める段階に入っている。
コロナ禍の影響が様々な方面に及んでいるが、その現われ方は必ずしも一様ではなく、率直に言って全体像を掴みづらい。製材工場の中には欠品が出るほど忙しいところがある一方で、転廃業を余儀なくされているところもある。同じ業種でも繁閑格差がかなり出ている。
昨年の春頃は、住宅展示場も閉鎖されて、先行きが見えない状況だった。だが、8月のお盆過ぎ頃から急に物件が動き出して、とくに木造注文住宅へのニーズが強くなっている。例えば、京都府のある工務店は2人で年間に1~2棟を建設してきたが、今は12棟もの問い合わせが来て、待ってもらっている状況だ。また、八ヶ岳(山梨・長野県)のある工務店は、1か月に2~3組の見学者が来ればいい方だったが、今は東京、横浜、名古屋など大都市部から20組もやって来るようになっている。

なぜそのような変化が起きているのか。
コロナ対策のためテレワークなどが普及し、職住接近のために都市部に住宅を構える必要がなくなってきている。年齢や所得など住宅取得層によっても異なるが、一極集中を避けて地方に居住することへの関心が確実に高まっている。
震災復興需要なども一巡し、コロナ前からの問題が顕在化
四季工房が本社を置く福島県をはじめとした東北地方の現状はどうか。

昨年のお盆過ぎから動きが出てきたが、ご指摘のように一律ではない。総じて首都圏からそれほど離れていない地域の住宅が増えているが、それ以外の地域でも結構動いているところがある。その理由は何か、まだ明確な答えはわかっていない。
それよりも東北、とくに福島県の場合は、コロナ禍の前から対応を迫られている大きな課題があった。それがコロナ禍によって想定よりも早く表面化してきたといえる。
大きな課題とは何か。
もともと少子高齢化で住宅着工数は減少することが確実だ。その中で、東北地方は東日本大震災後の復興需要、なかでも福島県は「原発特需」も加わって落ち込みを食い止めていた側面があった。しかし、それも一巡した。また、3~4年前からパワービルダーによるローコスト住宅が増えてきており、そのあおりで坪70~90万円クラスの木造注文住宅の売れ行きが落ちてきている。弊社としても、事業戦略を抜本的に見直して取り組みを強化しているところだった。そこにコロナ禍が発生した。
60~70歳代の施主が台頭、「思い出づくり」や「文化」がカギに
野崎社長が言うように、コロナ禍によって日本が抱えている構造的問題があぶり出されたといえる。では、この転換期に国産材業界はどう対応すべきか。住宅業界の最近の動向からヒントになることを教えて欲しい。
新設住宅を契約する平均年齢は男性が39歳、女性が35歳前後と言われており、30歳代から40歳代前半が住宅取得層のメインであることに変わりはないが、最近目立ってきているのが60~70歳代の「終(つい)の棲家(すみか)」となる家づくりだ。この需要はすごく増えてきていて、木造住宅を望むケースが多い。弊社の会員工務店でも、施主の2割くらいは60~70歳代だ。
また、私共は「思い出のトレサビリティ」と言っているが、家づくりを「思い出づくり」としてとらえている施主が相当数存在している。この人達は、工務店が主催する森林ツアーなどに積極的に参加するし、お父さんが伐採した丸太を大黒柱に使ったりする。住宅建築費とは別に「思い出づくり」のための予算を持っていて、飛行機代を払って遠隔地の森林ツアーに行く人も珍しくない。
住宅の“価値”は値段だけでは計れないということか。
家づくりのキーワードとして「文化」にも注目する必要がある。例えば、グローバル企業で活躍してきた国際ビジネスマンは、必ずといっていいほど木造で和の家をつくりたがる。ヨーロッパなどから友人が日本に来たら、自宅でおもてなしをしなければいけない。そのときに洋風の家に住んでいると、「あなたはアイデンティティがないのか」と言われてしまう。日本には世界に誇れる木の文化があることを再認識する機会にもなっている。
「木を伐って環境破壊にならないか」という疑問に答える
単に家を建てるだけでなく、物語性や体験の共有が重視されてきていることがわかった。四季工房の家づくりの場合はどうか。
弊社は、2001年から「100万本の植林運動」を実施してきている。「100万本」というのは、1軒の家を建てるのに使用した木を100本とし、1家庭につき100本の植林を1万世帯が行うという想定だ。この活動を通して“伐ったら植える”自然な循環をつくり出すことを目指している。
国産材を使う上で一番の問題は、「なんで山の木を伐って環境破壊にならないのか」という素朴な疑問にきちんと答えることだ。とくに、若い世代がこのような疑問を持っており、国産材利用に関する誤解が払拭されていない。
あらゆる山には人の手が入っているのだが、今は十分に利用できていない。適期に伐採し植林して山を若返らせていかないと、二酸化炭素の吸収量が低下して温暖化対策にもならない。こういうことをわかりやすく説明するのは意外と大変なので、『木を使わないと森がなくなる』という漫画の冊子を自前でつくって配布している。
なるほど。コロナ前・後にかかわらず解決すべき課題が多い。改めて“原点”に立ち返って対応策を考えたい。(後編につづく)
(2020年12月10日取材)
(トップ画像=漫画『木を使わないと森がなくなる』の一部)
遠藤日雄(えんどう・くさお)
NPO法人活木活木(いきいき)森ネットワーク理事長 1949(昭和24)年7月4日、北海道函館市生まれ。 九州大学大学院農学研究科博士課程修了。農学博士(九州大学)。専門は森林政策学。 農林水産省森林総合研究所東北支所・経営研究室長、同森林総合研究所(筑波研究学園都市)経営組織研究室長、(独)森林総合研究所・林業経営/政策研究領域チーム長、鹿児島大学教授を経て現在に至る。 2006年3月から隔週刊『林政ニュース』(日本林業調査会(J-FIC)発行)で「遠藤日雄のルポ&対論」を一度も休まず連載中。 『「第3次ウッドショック」は何をもたらしたのか』(全国林業改良普及協会発行)、『木づかい新時代』(日本林業調査会(J-FIC)発行)など著書多数。