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おおぐろの森小学校と中学校を2年連続開校、総工費100億円
東京の秋葉原と茨城県のつくば市を結ぶつくばエクスプレス。沿線では近代的な都市開発が進んでおり、子育て世代の移住が後を絶たない。児童・生徒数も増加している。
人気駅の1つである流山おおたかの森駅から20分ほど歩くと、おおぐろの森小学校と同中学校の建設現場が見えてくる。施設整備の共通コンセプトとして、「高台の緑に溶け込む森の中の木の学び舎」を掲げており、この4月にまず小学校が開校。続いて、来年4月には中学校がオープンする。総工費は、小学校が約47億3,500万円、中学校が約55億5,000円、合わせて約100億円(税抜き)に達する。
両校ともに校舎は3階建てで、延床面積は小学校が約1万2,000m2、中学校が約1万5,000m2。基本構造は木造(準耐火)とし、プールと体育館はRC・鉄骨造を取り入れている。
千葉県産スギや信濃町産カラマツをLVLに加工し柱・梁に使用
開校まで1か月を切り建設工事が最終段階に入っているおおぐろの森小学校は、図のような全容となっている。校舎部分(1時間準耐火構造)は防耐火面から3,000m2以下の3棟に分け、耐火接続棟を介して自由に行き来できるようにしている。

構造部分に使用している木材量は約1,850m3(表参照)。千葉県産スギや流山市の姉妹都市である長野県信濃町産カラマツをLVLに加工して、柱、梁、土台に用いているほか、間柱にはアカマツの製材品、耐力壁と屋根には構造用合板を使っている。

構造部分以外でも、内装材や家具に千葉県産のスギ合板やマテバシイの集成材を使用し、外壁にはスギ集成材の厚板パネルであるWOOD.ALCを用いている。様々な木質材料を「見える化」して学習などの教材として活用するとともに、県内木材産業の振興にもつなげる方針だ。


床材を輸入品から国産品に切り替え、中学校の耐火接続棟は木造に
来年3月の竣工に向けて基礎工事が始まっているおおぐろの森中学校も小学校と同様に国産の木質材料で構造躯体を構成する。使用木材量は約2,400m3に達する見込みだ。
小学校では床と屋根にフィンランド産LVL(メッツァ社製)を使っているが、中学校では(株)サイプレス・スナダヤ(愛媛県西条市)製のヒノキCLTを採用して国産材率を高める。
また、小学校ではRC造の耐火接続棟を中学校では木造化する。540㎜角×長さ11mの構造用LVLの柱を3枚の耐火石膏ボード(21㎜)で被覆して使うことにしており、日本木造住宅産業協会の2時間耐火認定を取得している。
このほか、小学校の部材接合で用いている一般金物(テックワン金物、鋼板+ドリフトピン接合)に加え、中学校ではGIR接合(鉄筋棒+エキポシ接着)も採用。市松状の耐力壁をつくって採光性を高めるなど、木造校舎を“進化”させる工夫が随所にみられる物件となっている。

CLTが「現実的な価格」に、2期にわたり“進化”する校舎
流山市は、2017年度の文部科学省「木の学校づくり先導事業」に採択され、プロポーザル方式で選んだ(株)日本設計(東京都新宿区)とともに、おおぐろの森小・中学校の新設プランを練り上げてきた。
日本設計は、2015年の建築基準法改正後、日本初の木造3階建て校舎となった山形県鶴岡市の羽黒高等学校や、青森県八戸市の西白山台小学校などを手がけており、木造校舎に関する豊富な知見を有する。
今回は首都圏で地域資源を活用するという新たなチャレンジとなったため、木更津市にある(株)キーテックのLVL工場を加工拠点にして、図のような体制を組み、準備を進めてきた。日本設計プロジェクト管理部フェローの小泉治氏は、「基本設計段階から関係者間で意見交換や情報共有を進めたことで価格などの変動要因を抑えることができた」と手応えを話している。

小学校では輸入LVLだった床材を中学校で国産CLTに切り替えたのは、「この1~2年でCLTの価格が現実的な金額になってきたから」(小泉氏)。2期にわたって3階建て木造校舎を新設するという前例のないプロジェクトは、国産木質材料の“成長力”を示すモデルケースにもなっている。

(2021年2月24日取材)
(トップ画像=流山市立おおぐろの森小学校)
『林政ニュース』編集部
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