天羽隆・林野庁長官が就任の抱負を語る

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天羽隆・林野庁長官が就任の抱負を語る

7月1日付けで林野庁長官に就任した天羽(あもう)隆氏(昭和61年入省・東大法卒、59歳)*1が8月4日に共同記者会見を行い、当面の取り組み課題などを語った。そのポイントをお伝えする。

「潮目が変わっている」「林業の魅力は豊富で増加する資源」

天羽氏が林野行政に携わるのは、入省してから初めて。豪雨災害への対応などに追われる中、約1か月をかけて業務内容全般の把握に努めてきた。この間に説明を行った各課からは、「とても勉強熱心。難しい案件は何度も確認し、理解を深めている」との声が出ている。

共同記者会見の冒頭では、言葉を選びながら次のように口を開いた。「日本は、戦後はげ山だったところに諸先輩の方々が一生懸命に苗木を植えて育て、やっと伐っていける時期になった。潮目が変わってきている」。また、「林業の魅力は資源量が豊富で増えつつあること」と述べ、「自然の恵みである木や森にかかわる仕事ができるのは有り難い」と意欲をみせた。

天羽隆・林野庁長官

天羽氏は、政界引退を表明した大島理森衆院議長が農林水産大臣だったときに秘書官をつとめ、ジェトロ・パリセンターに出向するなど様々な経験を積んでいるが、基本的に“主戦場”としてきたのは農業部門。直近の作柄や価格動向に振り回されることも少なくなかった。その点、「林業は時間軸が違う」と率直に言う。ただ、「環境は変わってきている」との見方も示し、「これからどうしていくべきなのか、業界の皆さんのお話をよく伺いながら考えていきたい」との姿勢をみせた。

災害に強い山づくりと循環利用システムの構築がミッション

今夏も各地で甚大な豪雨災害が発生している。天羽氏は、「雨の降り方が従来とは違ってきており、災害時の被害が大きく深くなっている。これに対応し軽減していくためにも、しっかりした山づくりをしていくことが林野庁のミッション(使命)の1つ」と強調。一方、川下分野では外材製品を中心とした価格高騰とモノ不足問題が収まっていない。「穀物、大豆、小麦や鉄鉱石などの価格も上がっている。(国際的に)モノが手に入りにくいという大きな流れが出てきている中で、国産材を伐って、使って、植えることにつなげていくことも林野庁のミッション」と位置づけた。

「変化への対応が重要になる」と述べる天羽長官

両親の出身地である徳島県に本籍を置いているが、育ったのは、「大阪、兵庫」。灘高校時代は新聞委員会に所属し、「新聞記者はかっこいいと思っていた時期もあるが、あまり向いてないと悟って断念した」。「父は大阪の街中で税理士をやっていて、中小零細企業のダイナミズムが日本の経済発展を支えていると思った」と話し、中小企業庁を志望先候補にしたこともあると振り返る。だが、「父の実家が園芸農家で農業が身近だった。役人になるのなら比較的弱いセクターのために仕事をするのがいい」と農林水産省を選んだ。

当面、最も力を注ぐのは、来年度(2022年度)予算編成になる。「新しい基本計画をつくって最初の予算要求であり、カーボンニュートラルというオールジャパンの目標もある。関連施策を推進できる予算を要求し、年末に向かって頑張っていきたい」と力を込めた。

*1林野庁長官に天羽隆氏、7月1日幹部異動 省No.2審議官に新井ゆたか氏、女性で初

『林政ニュース』編集部

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