7.3.1. 港湾直結の拠点を専用船で結び物流コストを大幅に削減する中国木材【健全で持続可能な原木・製品輸送の発展に向けて】

中国地方 広島県 研究 統計・調査

中国木材株式会社は、年間原木消費量約280万m³を誇る国内最大手の製材メーカーである。その圧倒的なスケールを支えているのが「製材業は物流業」という経営理念に基づく高度な物流システムである 。年間に北米材を約150万m³、国産材を約130万m³を加工する同社は、全国各地の製材工場と物流拠点の多くを港湾部に配置し、自社専用バース(船舶の接岸・荷役施設)を整え、拠点間輸送に専用船を利用することで物流コストを大幅に削減している。

事業者名中国木材株式会社
代表者名堀川保彦・代表取締役社長
所在地広島県呉市広多賀谷3丁目1-1
創業年1953年
業種・アンケート種類製品製造事業者(NO.2)
年間原木消費量2,800,000 m³
輸送主体委託
輸送手段トラック、船舶
ヒアリング対応者伊藤彰・物流部副部長、加藤幸希・営業部本社営業推進課

7.3.1.1. 大量かつ長距離に適した船舶利用で輸送コストを約2~3分の1に削減

同社は、全国14か所に拠点を展開している。そのほとんどは港湾部にあり、各拠点間を専用船で結ぶ大量輸送システムを構築している。

図7-3-1-1 中国木材の事業拠点
出典: https://www.chugokumokuzai.co.jp/company/company5/company5.html (2025/03/17閲覧)『事業拠点』

木材製品価格に占める物流コストの割合は高く、国内の物流コストは製材コストの約2倍にも達すると言われる。これに対し、大量かつ長距離に適した船舶を利用すると、m³当たりの輸送コストを約2~3分の1まで圧縮できる。一般的に、輸送距離が100kmを超えると船舶の優位性が高まり始め、200km以上の輸送距離になると顕著なコスト優位性が生じる。

さらに同社の場合は、各拠点にプライベートバースを整備していることで「横持ち」(港から工場までの陸上輸送)と滞船リスクを回避し、追加コストの削減を図っている。

7.3.1.2. 月極めで5隻の専用船を運用、開発段階から主体的に関与

同社は、専用船の稼働率向上にも注力している。現在、月極め契約で5隻の専用船を運用し、太平洋側を中心に日本全国を効率的に巡回するルートを確立している。

専用船のタイプには、499型(積載量約1,700m³)と749型(積載量約2,800m³)の2つがあり、輸送量に応じて使い分けている。専用船によって、トラック100台分以上に相当する大量輸送が可能になっている。

図7-3-1-2 本社工場での製品出荷(画像提供:中国木材株式会社)

同社の取り組みで特筆すべき点は、専用船の開発段階から主体的に関与していることである。専用船の容積や積載能力、エンジン出力(馬力)など詳細な仕様を自社の輸送ニーズに合わせて指定し、本社工場(広島県)‐鹿島工場(茨城県)間ならば中1日で往復できるように設計している。専用船の建造には数億円規模の投資を必要とするが、10年以上の長期契約によって月額固定費用化することで、設備投資の平準化を図っている。

7.3.1.3.ドライバーの拘束時間を削減し、燃料サーチャージ制度を導入

木材製品輸送量の多い同社にとって、「物流の2024年問題」による影響は無視できないものがある。このため同社は、数年前から「物流の2024年問題」への対策を本格化させてきている。特に注力しているのは、以下の2点である。

1.ドライバーの拘束時間の削減:荷役作業の効率化を徹底し、トラックの構内滞在時間を最小化している。具体的には、受注締め切り時間の明確化と前日までの出荷準備完了により、かつて3時間にも及んだ荷待ち時間を大幅に短縮した。現在は、大型フォークリフト2回の作業で10t車への積み込みを完了させるようにしている。

図7-3-1-3 大型フォークリフトでの積載
出典:本社工場にて調査チームが撮影(2025年3月)

2. 燃料サーチャージ制度の導入:燃料価格変動によるリスクを軽減するため、基準となる燃料価格を設定し、現在の市場価格に応じて運賃を自動調整する仕組みを導入した。これにより輸送事業者は燃料価格変動によるリスクを回避でき、長期的な協力関係の維持につながっている。 同社は従来、「即日即納体制」による顧客満足度の向上によって業績を拡大してきた。しかし、「物流の2024年問題」を契機として、より計画的な発注・納品体制への移行も視野に入れている。具体的には、豊富な販売実績データを活用した月単位での計画立案により、さらなる輸送効率化を追求することにしている。

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(株)日本林業調査会

1954年創業。「林政ニュース」の編集・運営・発行をはじめ、森と木と人にかかわる専門書籍の発刊を行っている。

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