広葉樹主体の自社林を育成し自前の生産体制も整える千歳林業
北海道俱知安町に本社を置く千歳林業(株)は、北海道を中心に約1万7,000haの社有林を持ち、その7割は広葉樹林で天然林施業によって経営・管理を進めている。昨年度(2024年度)の広葉樹出材量は約2万3,000m3。その約20%にあたる4,800m3は用材に、それ以外はパルプ・バイオマス用に向けられた。

同社経営企画部長の奥村隼右氏によると、広葉樹の価格は市場や取引先(納材先)との関係で変動幅が大きいが、パルプやホダ木・薪については自社生産を行えば価格調整が自由にできるので、薪の生産工場新設やチップ工場(白老町)の取得などを行っている。また、広葉樹材の活用策として、①コースターに加工して宿泊施設へ提供、②ミズナラをニセコエリアの蒸留所へウィスキーの樽材として提供、③曲がり・腐れ等がある材だけを集めて「迷木市」を開催し新たな販路を開拓──などに取り組んでいる。
木琴「森の合唱団」などをつくり信州の木を適材適所で活かす
長野県の信州ウッドコーディネーターとして活動している香田るい氏は、岐阜県のオークヴィレッジで勤務した経験を活かして独自色のある広葉樹製品を次々と生み出している。

「森の合唱団」と名づけた木琴は、サクラ・トチ・ホオ・カバ・キハダ・センダンなどを使った彩りの豊かな楽器で、グッドトイに選定された。また、ミズノ(株)と連携して野球のバットに使用できなかったアオダモやイタヤカエデをワンコインで購入できるストラップに加工・販売し、(株)フェリシモとともにサクラ・ホオ・ケヤキ・ブナ・ヤマナシなどからつくった木の鈴を「MOKURIN(モクリン)」として製品化し、売り上げの一部を広葉樹の森づくりに役立てるなど、異業種とも連携してネットワークを広げている。
世界で通用する新製品開発プロジェクトを進めるカリモク家具
カリモク家具(株)(愛知県東浦町)の取締役副社長・加藤洋氏は、「国産材は、私たちの業界でも注目を浴びている」と述べた上で、2009年から進めている新製品開発プロジェクトの進捗状況などを解説した。

代表的なコレクションとなっているのは「KNS(カリモクニュースタンダード)」で、未利用広葉樹材など価値が低いとされている木を最新のデザイン力で製品化し、ブランド価値を高めている。
また、2018年からは「KARIMOKU CASE(カリモクケース)」というコレクションも始め、キッチンや窓枠などの分野で国産広葉樹の利用を進めている。
こうしたコレクションを当初は国内で発表していたが、世界への発信力を高めるため、イタリアのミラノで行われた展示会に出展したところ、日本らしい落ち着いた空間が創出できると高い評価を受けた。
その後、家具の聖地と言われるデンマークのコペンハーゲンで開かれた展示会にも出展し、同じく好反響を得ており、さらに製品ラインナップの拡充などを図ることにしている。
(2025年11月18日取材)
(トップ画像=オンラインを含めて約230人が参加した)
『林政ニュース』編集部
1994年の創刊から31年目に突入! 皆様の手となり足となり、最新の耳寄り情報をお届けしてまいります。