滋賀県の2造林公社が全国初の特定調停申立て

滋賀県 森林経営・管理 事件・不祥事

約1,000億円の債務を抱えている滋賀県の「県造林公社」(理事長=嘉田由紀子・県知事)と「びわ湖造林公社」(理事長=西堀末治・前県教育長)が、裁判所の仲介により債務の削減を図る特定調停を申し立てた。林業公社(森林整備法人)が債務対策を特定調停に委ねるのは全国で初のケースとなる。

裁判所の仲介で累積債務の削減策を探る

2公社は、11月8日にそれぞれ大津市で理事会を開催。債権者の農林漁業金融公庫と大阪府など8つの下流団体及び県に対し、債務の圧縮を求めるため、特定調停を申し立てる方針を了承。県公社は11月12日、びわ湖公社は11月15日に、それぞれ大阪地裁に特定調停を申請した。

2公社の累積債務は、昨年度(平成18年度)末時点で1,057億円に膨らんでいる。嘉田知事は、2公社を存続させて、伐採収入で返済する方針を示していたが、伐採収入の試算額は、県公社が2015~2051年度で最大約122億円、びわ湖公社が2023~2068年度で同約281億円しかなく、約653億円の債務超過が見込まれている。

このため、8日の理事会では、森林所有者の伐採収益分収割合を4割から1割に引き下げる経営改善案とともに、特定調停申請の方針を賛成多数で決めた。

(注)特定調停=支払い不能になる恐れのある債務者の経済的再生を目指す民事調停の特例制度。2000年から導入された新しい債務整理手続き。

【解説】農林公庫の返済猶予も切れた異例のケース

滋賀県の2公社が、懸案の債務対策を特定調停に委ねるという前例のない手法に踏み切った。ただし、これが全国に40ある林業公社(2006年度末の債務総額は約1兆円)の債務問題解決につながるモデルになるとはみられていない。滋賀県の公社問題は、特有の事情を抱えているからだ。

2公社の債務総額1,057億円の内訳は、農林漁業金融公庫467億円、滋賀県424億円のほか、琵琶湖・淀川水系の大阪府・市、兵庫県、神戸、西宮、尼崎、伊丹各市など計8自治体・企業団が計166億円。

2公社側は、最大の債権者である農林公庫から、具体的な債務処理計画を示すことを条件に、2005・2006年度の2年間にわたり返済猶予(利子を含む)の措置を受けていた。いわゆるモラトリアムの特例が認められていたのは、全国で2公社だけ。しかし、今年度に入っても処理計画を示すことができず、4月以降は返済の延滞状態が続いていた。

このため、農林公庫は11月8日、2公社に対し、累積債務の全額繰り上げ償還を近畿支店長名で請求。すでに支払い期限の8日をすぎ、利子が加算される事態となっている。滋賀県は農林公庫と損失補償契約を結んでおり、2公社が返済できない場合は、滋賀県が返済の肩代わりをしなければならない。

滋賀県は、2公社にとってナンバーツーの債権者でもあるが、嘉田知事は、「下流社員(自治体等)や農林公庫に債務圧縮を協力願う条件として、県としての負担は避けられないのではないか」と述べており、債権を放棄をする可能性がある。それでも、農林公庫と下流自治体は、「全額償還」が基本スタンス。8日の理事会では、特定調停申請への反対意見もあった。裁判所の仲介により落としどころを探る特定調停が成立するかどうか、見通しは不透明な状況だ。

なお、林野庁企画課は、「債務対策は(滋賀県と農林公庫など)当事者間の問題であり、国としては見守るしかない」と話している。

(2007年11月15日取材)

詠み人知らず

どこの誰かは知らないけれど…聞けないことまで聞いてくる。一体あんたら何者か? いいえ、名乗るほどの者じゃあございません。どうか探さないでおくんなさい。

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