東京都は、今年度(2025年度)予算を活用して、未整備森林の解消に向けた新たな対策に着手する。
これまで都は、「WOOD COLLECTION」(モクコレ)の開催や「木材利用ポイント事業」の実施など、一大消費地として国産材の需要拡大に取り組んできた。ただ一方で、多摩地域西部には都面積の約25%に当たる約5万3,000haの森林があり、そのうち6割が人工林となっている。都は、花粉発生源対策事業の一環として主伐・再造林を推進しているものの、「所有者の高齢化が進み、このまま不明な林地が増加していくと管理が手遅れになる」(都森林課)と危機感を高めており、今年度から2つの事業を進めることにした。
1つは、「伐採を促進する契約合意支援事業」(予算額は3億5,400万円)で、相続登記がされていない放置林の所有者を特定し、所有林の“若返り”を働きかける。市区町村段階では森林経営管理制度を利用して所有者の探索などが行われているが、都道府県が直接乗り出すのは全国的にも例がない。
同事業では、経済林に適したエリア内の森林所有者を司法書士や税理士と連携して割り出す。登記簿謄本などから所有者に関連する情報を辿って法定相続人などの連絡先を特定し、相続人が判明すれば登記更新を促して都による森林整備事業などを提案する。また、境界が不明確な場合は、隣接の所有者などと協力して境界を確定させる。
もう1つは、「間伐材供給促進事業」(同1億4,000万円)。3ha以上の間伐区域を設定して、整備に必要な作業道等開設費や機材の購入費などを助成する。搬出した間伐材を都内の原木市売市場に供給する以外は、補助要件等の縛りが少ない使い勝手のいい事業としている。都の花粉発生源対策事業は主伐がメインのため、架線集材のできる事業体などしか受託できない実態がある。新たに実施する同事業では、計画した間伐さえできればチェーンソー1台でもスタートできる。都森林課は、「多摩産材の供給力アップと林業事業体の強化につなげたい」と話している。
関連して、「製材業供給力強化事業」(同1,000万円)も行って、製材所のJAS認証の取得・更新や設備投資を支援する。
なお、毎年夏に行ってきた国産材展示商談会「WOOD COLLECTION『JAPAN Re WOOD』」は取り止め、代わりに林業の魅力を発信するイベントを開催することを検討している。
(2025年4月30日取材)
『林政ニュース』編集部
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