林野庁で東北森林管理局次長(青森事務所長)などを歴任した大貫肇氏(昭和57年入庁・東京農大卒・平成16年Ⅰ種登用)が筑波大学で博士号を取得した。テーマは、「製材工場の動向が製材用素材価格に及ぼす影響の解明」。製材工場の経営を左右する製材歩留まりの実態や、事業規模(原木消費量等)の拡大と利益率の関係などを実証データ等に基づいて初めて明らかにしたことが評価された。
実家が製材工場を営んでいた大貫氏は、昭和57年に林野庁に入ってからも一貫して現場目線に基づいた仕事ぶりをみせ、独自の勉強会を開催して後進を育てるなど存在感を放った。退職後も物林(株)や新電力開発(株)に籍を置いて、国産材の需要拡大や再造林コストの低減などに取り組んでいる。
その一方で、向学の志も高く、59歳のときに筑波大学の大学院(社会人コース)に入学。2年の休学を挟み足かけ5年を費やして念願の博士号を3月25日付けで手にした。論文審査の主査は、同大学准教授の興梠克久氏がつとめ、大学院入学時に同大学准教授だった立花敏氏(京都大学教授、林政審議会会長)が伴走者として指導にあたってきた。
大貫氏は、2つの原著論文(「製材歩留まりと製材用素材価格との関係に関する研究」及び「生産指標に基づく製材工場の経営分析」)をもとに博士論文をまとめあげ、「業界の皆さんが何となく『そうだろう』と思っていたことを科学的に立証することができた」と言う。ただし、「博士号取得がゴールではない」とも話しており、「日本の林業を活性化させて次の世代につなぐために、やるべきことは山ほどある」と早くも新たな歩みを始めている。
(2025年3月25日取材)
(トップ画像=学位記(学位を取得したことを証明する書面)を手にする大貫肇氏)
詠み人知らず
どこの誰かは知らないけれど…聞けないことまで聞いてくる。一体あんたら何者か? いいえ、名乗るほどの者じゃあございません。どうか探さないでおくんなさい。