ライブ配信でネットワークを広げる銘木のムラモト【突撃レポート】

石川県 木材流通 銘木・造作材

ライブ配信でネットワークを広げる銘木のムラモト【突撃レポート】

国内外の銘木や断熱材の「ウールブレス」を取り扱う(株)ムラモト(石川県金沢市、村本喜義・代表取締役社長)が提供する「銘木市」のライブ配信が好調だ。コロナ禍を契機に始めた新たな試みが軌道に乗り、新規顧客の獲得などネットワークの拡大につながっている。(文中敬称略)

「3密」回避の新たなサービスが定着、“魅せる倉庫”に進化

ムラモトの取り扱う主な製品は、ムク(無垢)材や幅はぎ加工した一枚板などの仕上げ材。取り扱う樹種は幅広く、スギ、ヒノキ、ヒバ、ウォールナット、タモ、ブラックチェリー──など国内外に及ぶ。

ムラモトの押水物流倉庫内、最大長さ8mの一枚板などが展示されている

主な顧客は、全国各地の工務店や木材問屋。一枚板だけでなく、特殊材や注文材にも応じられる豊富な在庫量ときめ細かなサービスは業界内でも評価が高い。12月を除く毎月22日には、同社の押水物流倉庫(宝達志水町)で「銘木市」を開いており、遠方の顧客もやって来て目当ての逸品を購入していく。

だが2022年、新型コロナウイルスが猛威を振るい「銘木市」の開催が難しくなった。そこで同社は、「3密」を回避するためにフェイスブック(Facebook)で「銘木市」のライブ配信をスタート。当初はスマートフォン1台で始めたが、今では専用のライトやカメラ(ゴープロ)などを完備して配信体制を整え、視聴者も増えてきている。

ライブ配信は、「銘木市」の準備が整う毎月21日の午後に行っており、4名の担当者が製品の価格や樹種、サイズ、特長などを説明する。ライブ動画は月末まで公開されており、好きな時に視聴して購入もできる。基本的に価格は小売価格で表記しており、木材問屋などのまとめ買いには卸売価格で対応している。

小売価格がわかりやすく表記されている

「銘木市」のライブ配信を継続することで、新規顧客の獲得など商圏が広がってきた。社長の村本(65歳)は、「顧客とのコミュニケーションに欠かせないツールになっている」と手応えを話し、「徐々に“魅せる倉庫”に進化してきた」と続けた。

村本の言うとおり、倉庫内は整理整頓が行き届き、一枚板は空間のスペースを考慮して立てかけられ、各種製品の“見映え”は確実に高まっている。

事業承継を機に銘木業へ参入、断熱材「ウールブレス」も販売

ムラモトは、先代の村本外喜男氏が1964年に創業した。発足当初は、先代、村本、職人1名の計3名で工務店向けに構造材や下地材などを販売していた。

だが、プレカット加工の台頭により「この先に未来はない」(村本)と判断し、約20年前の事業承継時に銘木業に参入、同時に繊維工場だった押水物流倉庫を購入した。村本は、「木材を適温適湿で保管できる倉庫を取得できたのが大きかった」と当時を振り返る。

同社は、銘木業に参入する数年前に、断熱材の「ウールブレス」を取り扱い始めた。「ウールブレス」は、(株)アイティエヌジャパン(奈良県大和郡山市、小杉直也社長)が製造するオーストラリア産の羊毛を使った断熱材だ。

ウールブレス(画像提供:ムラモト)

村本は、「断熱・調湿性能はピカイチ。各種認定も取得している」と強調した上で、「製造・輸送面で環境負荷を抑えており、住宅解体後も再利用できる。SDGsが追い風になっている」と口にした。

新たに中央アジア諸国開拓、環境にやさしい幅はぎ材にも注力

ムラモトは、各種の銘木と断熱材で売上げの約7割を稼ぎ、壁材や自然塗料なども販売している。従業員は10名にまで増え、村本は仕入れ業務に専念できるようになった。後継ぎとなる長男の村本(ひろき)(38歳)も専務取締役として働いている。

一見すると順風満帆に映るが、村本は、「銘木、とくに広葉樹材の調達が益々難しくなっている」と険しい表情を浮かべる。その背景には、森林資源の減少や、円安と相まった輸入材の価格高騰がある。また、「東南アジア諸国が経済発展して資金力がつき、銘木の取り合いが激しくなってきた」という実態もある。

そこで村本は、今年(2024年)から新たな仕入れ先を求めてウズベキスタンやカザフスタンなど中央アジア諸国に足を運ぶ予定だ。「まだ手つかずの地域も多く、北海道や東北と同緯度に位置するので、特長的な木目の材を仕入れられる可能性がある」と言う。

メープルやタモの幅はぎ材

一方、国内ではスギやヒノキなどの調達に努めながら、県内外の木材加工業者とタッグを組んで幅はぎ材の開発に力を入れている。幅はぎ材ならば小径木の板材や耳付き材なども利用でき、「資源を有効利用する有力な新商品になる」と期待を寄せる。

村本喜義・ムラモト代表取締役社長

今後の方針については、「多種多様な在庫を持ち、幅広い顧客に提供していく」とブレのない姿勢を示す。同社の企業理念は「すべては住まう人と住宅そのものに」。新建材を扱わず自然素材にこだわってきた調達・販売方針に磨きをかけ、「これからもきれいな木目や面白い木目の材を仕入れ、販売していく」と村本は目線を上げた。

(2024年7月9日取材)

(トップ画像=ムラモトがコロナ禍をきっかけに始めた「銘木市」のライブ配信は新たなマーケティングツールになってきている)

『林政ニュース』編集部

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